吟行

 吟行とは、名所などのいろいろな場所に出かけ、そこでの散策を通して俳句を作ることである。一人で行って吟行する場合もあるが、大抵俳句の仲間で出かけて、語らいながら楽しみながら俳句を作ることが多い。吟行が終わった後、句会をして詠んだ俳句に点数を付け合うのである。実に楽しいひとときである。これが楽しくて俳句を続けている方も多いのである。
 吟行後の句会で句を披露すると、「おや、私と同じあの風景を詠んだ人がいる。」とか「あの植物のことを詠みたかったが、こんな風に詠めばよいのか」とか「ほとんど私と同じ句だな。私と一緒に散策したあの方が詠んだのだろうかな」とか「あんな上手な句は先生の句に違いない。一点入れよう」とか「先生の句を探してみよう」とか「自分より上手な句ばかりだな」とか「今回の句会は水準が低いな」などと、いろいろ想像しながら楽しむのである。
 さて、吟行で前衛俳句を作る人はまずいない。場違いである。大抵写生句である。写生句は俳句の基礎基本といえるだろう。ホトトギスが客観写生を提唱したが、これも俳句の基本的態度といえるであろう。初心者は客観写生などといわなくても写生でよいのである。
 吟行は、俳句独特のものであり、俳句に近いといわれている短歌でも行われていないものである。吟行がなければ俳句をやる方はずっと少なくなるであろう。私も吟行は好きであるが、どうもうまい句ができないのである。吟行よりも、それが終わって、時間が経って、一人になって机に向かっている時に気に入った句がふっとできるようである。作句態度は人それぞれである。

                                              2007.8.18