書く俳論がない場合
俳句について書くことが思い浮かばないのである。それで、何をすべきか考えているのである。やはり俳句を詠むべきであろうと思うのである。やはりそれが常道である。さて、どんな句を詠むべきであろうか。庭で秋の虫がいろいろと啼いているのである。それで秋の虫を詠もうと思ったが、何も思い浮かばないのである。それでゴキブリにすることにしたのである。理由は何もないのである。ゴキブリは真っ黒で、それで暗闇の一部と比喩ることができると、秋の虫の声を聴きながら思いついたからである。
ゴキブリの闇の弾丸走りけり 孝治
今ひとつである。
ゴキブリや闇より生まれ闇に死す 孝治
今ひとつである。
ゴキブリや闇より出でて闇に消ゆ 孝治
今ひとつである。
ゴキブリや闇をちぎりて走りけり 孝治
今ひとつである。
しかし、四つできたのである。ゴキブリの句が四つである。多くの俳人はゴキブリのような汚い虫を詠もうとはしない傾向にあるが、ゴキブリの句で秀句が出来たら大したものだな、と思うのである。素材が最初から美しいものなら、秀句は読みやすいと思うのである。素材が汚いものでも秀句が詠めたら素晴らしいでことではないか。そんな処にもしかしたら、何かが隠れているかも知れないと思うのである。汚いと思われている素材をいかにしたら上手く詠むことができるのだろう。これも課題のひとつである。
2007.10.31