子供のように詠む

 西洋絵画の世界では子供のような絵が高く評価されるということがある。素人の私にも描けそうな気もするのである。また自由詩の世界でもプロの詩人が少年詩をつくることもある。だが、俳句の世界では子供のような俳句は全く評価されていない。誰でも詠めると思われているからであろう。しかし、である。一見子供のような作品に見えて、実際はなかなかつくれない句はできないものであろうか。この分野は俳句界には存在していないのであろうか。やってみる価値はあろう。で、実践するのである。

子供の発想風俳句     孝治

黒塀を上る黒蟻よく見えぬ
堂々と高速道路蟻よぎる
こいのぼり煮干のようにたれ下がり
こいのぼり雀が口より飛び出たよ
大網でメダカの学校一すくい
悪童が西瓜畑で西瓜割
福笑いきれいに並べ笑いなし
向日葵が頭をたれて立たされて
梨林檎葡萄に羊羹食いたいな
秋風が蟻の頭をなでていく
木をければ桜の花が散りまくる
お空にはレモンに似ているお月さま

 如何であろう。子供風であろうか。私は子供ではないので、やはりどこか大人の感覚が残っている。しかし「この分野あり」と思うのである。子供風という個性が感じられないであろうか。無理と思われている部分に何かしらのアイデアや新しい世界が隠されているのである。

                                                    2008.12.6