地方季語

 「嫁が君」という新年に使用される言葉がある。特に新年三が日は、鼠をそう呼ぶのだそうである。関西地方の方言である。角川の歳時記にも載っている。季語としてしっかり認められているということである。歳時記で句を調べてみると、一流俳人も詠んでいる。一流俳人にも認められている季語ということである。

三宝に登りて追はれ嫁が君      高浜虚子

年に一度はものに臆すな嫁が君    中村草田男

 新年だから鼠よりは綺麗な言い回しということであろうか。他の地方ではほとんど知られていないであろう。だが季語として認められたということは、関西地方ではよく知られ、また俳句にもよく詠まれているということであろう。詠むものがほとんどいない言葉は季語として認められないであろう。これは認められた「地方季語」である。
 さて「小夏日和」という言葉がある。一般にこれは小春日和のことだそうであるが、沖縄地方しか使用されていないとのことである。沖縄で使用する俳人がいるらしいが、ほとんど知られてはいない。よって、全国的に季語としては認定されていない。しかし小夏日和という言葉の響きはなかなかいいものである。沖縄の「地方季語」として認定されてもよいであろう。季語にもこのように「地方季語」が存在するということである。その地方季語が「嫁が君」のように全国的に認められることもあるということである。
  さて「地方季語」とよく似た言葉として「方言季語」がある。この違いは何であろう。方言が季語の場合、それは方言季語であり、方言でない場合は地方季語としてはどうであろう。しかし嫁が君も小夏日和も方言であり、両方の要素を含んでいるということである。地方季語の方が言葉としてはいいかも知れない。

                                           2008.11.23