消えゆく季語
角巻(かくまき)という季語を知っているであろうか。ワープロ変換にも出てこないのである。これは防寒具であり、北海道や東北、北陸のような寒い地方に住む婦人が使用する頭から被る四角い毛布のような肩掛けである。
若い人はまず見たこともないであろう。七十八十歳のお婆ちゃんなどは使用したことがあるかもしれない。民族資料館などに飾られていても不思議ではないであろう。これで俳句を詠む人は、現在まずいないであろう。私も微かに記憶している程度である。しかし、縁に沿ってふわふわした部分もあり、風情のある防寒具である。角巻の女性で俳句がいくつも詠めそうな気もするのである。上品であり、季語としてはなかなか質の良いものである。しかし、消えてしまった防寒具であり、必然的に季語も消えゆくものである。消えてしまったといってもよいかも知れない。古い文化と共にきえゆく季語には、どこかしら寂しさだけでなく、懐かしさや情緒なども漂っているような気もするのである。
角巻を被りし母の美しく 孝治