季語の強さ

 季語は数多くあるが、一般の俳人はまんべんなく季語を使用して句を詠むということはないであろう。また得意分野の季語というものもあるのではなかろうか。「生け花をやっているので、お花の季語が多い」とか「どちらといえば行事の句が多いな」「虫が好きで虫の句が多い」とかである。このように俳人によって詠みやすい季語があると思うのである。では共通に詠みやすい季語はないのであろうか。たとえば「雪」はどうであろう。東日本に住んでいる俳人にとって、雪からいろいろな場面が直ぐに思い浮かぶであろう。小さい頃二階から出入りした位の大雪のことや玄関から道路まで雪踏みをしたとか、雪道で転んだとか、雪合戦で泣いたとか、かまくらを友達と作ったとか、いろいろと思い出されるであろう。雪のイメージが一人一人異なり、場面も多く、俳句も詠みやすいのである。「桜」ならばもっと思い出せる場面があるかも知れない。
 では「春」や「夏」の季語はどうであろう。春は絶対的に春の季語であるが、抽象的すぎて詠みにくいであろう。しかし春が「春の川」や「春の山」ならば話は別であろう。川や山という言葉で読みやすくなったであろう。
 このように思い出の場面が具体的に浮かぶような季語感が強い季語は、俳人にとって詠みやすい季語ということである。詠みやすい季語は昔から名句が多いのではなかろうか。名句は季節感の強い季語からつくられやすいということである。名句を獲得したければ、季節感の強い季語を詠めばその確率は高くなるということである。

                                          2008.11.9