切れ字の位置

                        

 俳句の代表的切れ字は、「や」と「けり」と「かな」である。この三つの使う位置には特徴がある。まず、「や」であるが、上五に使用される場合がとても多い。戦前は中七に使用されることもよく見られたが、この頃はそれほど使用されていない。流行廃りがあるようである。上五の「や」は流行廃りに影響を受ける事が少ない。
 では、なぜ一句目によく使用されるのあろうか。それは下五に置いても様にならないからである。「や」という響きには、次にまだ何かあるぞという感じがするのである。中七に使用される場合、中七まで来ると大体の句の感じがつかめてしまい、インパクトが弱いのである。また最後に置くと疑問の「や」と勘違いされてしまうであろう。よって、「や」は上五に相応しいのである。
 また、「けり」はどうであろう。「けり」は過去の助動詞である。詠嘆の意味もあり、「〜だったなあ」という感じである。よって、行ったことを詠嘆するのであるから句の最後に来るのである。上五にはまず見られないであろう。中七の使用も少ない。下五に相応しい切れ字である。
 「かな」は詠嘆の意味がある。また全体に響く切れ字である。「けり」以上に下五に使用されている。これも行ったことの詠嘆であるから、下五が相応しいのである。中七に使用されることもほとんどない。下五の切れ字と断定しても差し支えない。
 ここで疑問なのは、なぜ中七に切れ字が少ないかということである。それはこの位置での切れ字が相応しくないからである。ここで切れては句の全体の勢いが削がれるからであろう。中七に切れ字を使用した名句も少ない。しかし使用されることもあるので、工夫の余地はまだあるであろう。

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