切れ字の一考察その二

   
 代表的切れ字として「や けり かな」がある。それ以外にも「ぞ もがな か よ つ ぬ し」などいくつかある。だがそれらはほとんど使用されていない。切れ字としてほとんど知られてもいない存在である。
 切れ字といえば「や けり かな」である。だが「や」と「かな」は助詞であり、 「けり」は助動詞である。そもそも切れ字とは一体何であろう。切れという言葉からして、 文を切るという意味であろうか。言葉の意味を強める働きがあるのであろうか。響きや余韻を表 現するものなのであろうか。それとも省略を示しているのであろうか。それぞれにそれなりの意 味があるように思える。

降る雪や明治は遠くなりにけり   中村草田男

 この句について以前考察したことがある。もう一度別の観点から考察することとする。
さて、「や」は「降る雪」を強める働きをしているが、「けり」はそれを受けて明治が遠くなったものだなあと詠嘆的に響いている。つまり「や」は「強意」の働きをするが、「けり」は詠嘆としての働きなのである。つまり切れ字と言っても働きが異なるのである。「かな」も俳句の最後に付き、詠嘆的に活用される傾向にある。

田一枚植えて立ち去る柳かな    松尾芭蕉

 などは、詠嘆として活用されている。つまり、「けり」と「かな」は同じような詠嘆としての働きをするが、「や」はその前の言葉を強める働きをしているのである。
 このように切れ字と言っても活用が異なるのである。だから解釈がいくつか存在するのであろう。私の一つの結論として、切れ字はそれぞれの活用が異なるので、いろいろに解釈され、それらのどれもが間違っているとは言えないということである。切れ字は奥が深いのである。この分野はまだまだ研究する価値のある分野であることは確かである。

                                             2005・11・26

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