「切れ字」はいつ登場したか
「や」「けり」「かな」などの切れ字はいつ登場したのであろう。多分、俳句が登場した時からである。俳句の専門用語といってもよいであろう。それ以前はない概念であろう。俳句は短歌の上句が独立したものであると言われている。「けり」や「かな」という言葉は、もともと短歌にあるのである。しかし、短歌では切れ字といわずに、詠嘆といっている。短歌に切れ字はないのである。短歌は調べが重要であり、「切れ」は好まないのである。だから、切れ字はないのである。詠嘆の「けり」や「かな」が短歌から俳句に移行した時に、詠嘆という概念は消え、それが切れ字となったのである。では、詠嘆と切れ字の違いは何であろう。似たようなものだという人もあるが、違うであろう。詠嘆は「〜だったものよ」という軽い感動を表している。切れてしまうという意味合いはないのである。切れ字は、言葉も切れるのであり、その後には音の余韻が残るのである。詠嘆してはいないのである。切れ字を詠嘆というと、「〜だったなあ」などという余計な感情が入ってしまい、俳句としてはいけないのである。だから、俳句に詠嘆はないのである。切れの余韻なのである。
さて、「や」という切れ字はどうなのであろうか。。短歌に「や」という詠嘆はないのである。否、昔はあったのかも知れないが、現在ではほとんど聞かないのである。「や」は俳句が登場してから脚光を浴びた言葉である。「や」は俳句を俳句らしくしている最も俳句らしい切れ字である。切れ字の王様が「や」なのである。「や」は俳句の中に組み込まれているが、「けり」」や「かな」はたいてい尻尾についており、それ故音の響きが感じられるが、「や」は、切れそのものであり、余韻もそれほど感じられないのである。「や」と「けり」「かな」とはやはり元々異なるものなのである。一緒に論じてはいけないのである。
つまり「切れ字」は二種類あり、音の響を重視する「けり」「かな」と響きよりも切れそのものを重視する「や」があるのである。