小春日和という季語

 小春日、あるはい小春日和という季語がある。中学生の頃まで、これはてっきり早春の頃の天気のよい暖かい日のことかと思っていた。それが冬の季節であると知った時、やや違和感を感じたとともに日本語は奥が深いなと感じた記憶がある。
 さて、俳句ではどんなものがあるのだろう。名句はないように思う。歳時記をひくと高名な俳人の次の二句が一番目と二番目に並んでいた。

小春ともいひまた春の如しとも     高浜虚子

玉の如き小春日和を授かりし      松本たかし

 虚子の句は、小春を春の如しというのであるが、あまりよい句ではないように思う。名前で載せた句であろう。高名でなければほぼ間違いなく没の句である。たかしの句は、小春日和そのものに感動している句である。そういえば冬のある日、小春日和に出会った時、「ああ、暖かくてほっとするいい日だな」と感じたことがある。小春日和そのものが感動を含む季語であるということである。最初から感動を含んでいる季語は扱いが難しいように感じられる。それに冬なのに春の雰囲気なのである。冬と春とが交ざり合い、それでいてその二つの雰囲気を潰してはいけないのである。本当に難しい季語である。でも詠んでみようと思うのである。

冬消えて小春日和となりにけり       孝治
日向にて眠る老婆や小六月         孝治
隠れんぼ小春日和の陰の中        孝治

今ひとつであろう。なかなかに難しい季語である。