昆虫季語

 蝉は夏の季語であるが、種類によって季節の分類が異なる。たとえば、夏の季語は、みんみん、クマゼミ、にいにい蝉、唖蝉、松蝉、空蝉などがあげられる。また秋の季語は、蜩、つくつく法師、秋の蝉などがあげられる。
 つまり蝉そのものは夏の季語であるが、種類によって夏と秋に分類されるということである。私の分類法ならば蝉は「夏の第二季語」ということである。それは兎も角、種類で季節が違うという考え方は大切である。
蜻蛉(とんぼ)の場合はどうであろう。角川の歳時記では蜻蛉は秋の季語であり、蜻蜒も赤蜻蛉も秋である。夏の場合は、糸蜻蛉、川蜻蛉となっている。つまり蜻蛉は「秋の第二季語」ということである。
 蝉も蜻蛉もよく知られた昆虫であり、種類の分類もなされているのであるが、他の昆虫はどうであろう。たとえばクワガタ虫ならばどうであろう。クワガタ虫には、オオクワガタ、ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、シカクワガタ、ルリクワガタ、チビクワガタなどがあげられる。昆虫が好きな人は知る名前ばかりである。しかし昆虫に興味のない俳人はノコギリクワガタぐらいしか知らないであろう。そう考えるとクワガタ虫はクワガタしか季語にはなれないのかも知れない。それにクワガタ虫は俳句にとって長い名前である。俳句に向かない虫なのかも知れない。そういえばクワガタ虫の名句はないように思う。名前が蛍のように短いと名句もできたかも知れないな、と思うのである。カブト虫もいくつかの種類があるが、句ではカブト虫のみである。他のいくつかの昆虫も種類まで分類されていないようである。分類できても詠む俳人がいないのであろう。詠む俳人がいなければ季語としての意味がないということである。
 さて、昆虫で種類までも季語に明確に分類されている昆虫は蝉と蜻蛉だけであろうか。この2つは昔から俳人によく詠まれているので、季語分類されるようになったのであろう。

                                          2008.10.26