去年今年という季語

 この季語は「去年」と「今年」との二つの言葉が対等に組み合わさっている珍しい季語である。あまり例がないであろう。意味は、年の変わり目で、去年を振り返り今年を眺める、といったところであろうか。目に見える具体物ではないのである。であるから、

去年今年貫く棒の如きもの     高浜虚子

 のような抽象的な句ができるのであろう。この季語は俳句とっては難しい季語である。時間の流れがあり、俳句のような瞬間を切り抜く文芸にはあまり相応しくないように感じられる。だが魅力的な季語ではある。年の区切りとして詠んでみたい気持ちに駆られるのである。さて去年今年は12月の冬の季語であろうか。それとも新年であろうか。歳時記では新年となっている。年の変わり目で去年を振り返るというのだから、多分分類としてはそうなるのだろう。時間としては12時過ぎの1月1日になったばかりの時間帯であろうか。しかし12月31日の季語としてもそれほど無理はないように思う。去年今年の時間が何処かを考えることは無意味なのかも知れないが、面白い季語ではある。

                                               2008.12.23