句読点の付いた俳句

 句読点の付いた俳句はあまり見ないが、短歌では高名な歌人、釈迢空が大正時代に既に取り入れている。

葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり 
人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどのかそけさ 
水底に、うつそみの面わ 沈透き見ゆ。来む世も、我の 寂しくあらむ

ただ釈迢空に追随する歌人がいなかったのである。
さて、この発想を俳句に取り入れてみよう。

降る雪や。明治は遠くなりにけり。
神田川(が)、祭の中を流れけり。
古池や(に)、蛙飛こむ水の音。
閑かさや。岩にしみ入蝉の声。
荒海や。佐渡に横たふ天の川。
柿くへば、鐘が鳴るなり法隆寺。

 このように句読点を入れるとどのような構造に句が構成されているかがよく分かるであろう。句の構成を調べる時に役立つ技術であると思う。しかし、実際に自分の作品に句読点を入れて発表するのはやや勇気が必要である。理論武装、つまり理屈をうまく付けないと「お馬鹿さんね」でお終いである。理論化できない訳でもないが、多分ダメであろう。感覚的に否定されるであろう。引く時はさっと引く姿勢が大切である。

                                                2009.5.4