名句の条件
名句の条件とは何であろう。ここに7つ上げてみる。
1 多くの人に強い感動を与える。
2 場面や対象の印象が鮮明である。
3 切れ字がよく利いており、句の響きがよい。
4 深みがある。
5 発見がある。
6 季感が漂っている。
7 俳人の個性が感じられる。
芭蕉の句には名句と呼ばれるものが多いので、いくつか例に挙げ、どの条件に適合しているかを考えてみたい。
古池や蛙とび込む水の音 1 2 3 4 5 7 の条件に適合
閑かさや岩にしみ入る蝉の声 1 2 3 4 5 6 7の条件に適合
荒海や佐渡に横ふ天の川 1 2 3 4 5
の条件に適合
五月雨を集めて早し最上川 1 2 3 4 5 6
の条件に適合
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 1 4 6 7
の条件に適合
句の隣の数字は、名句の条件として適合しているのではないかと判断した番号である。主観的要素がないというわけではないが、私は芭蕉の最高傑作は全ての条件を満たしている「閑かさや」の句であると考える。このように条件を分類し、どれだけ適合しているかを考えれば名句を主観的ではなくやや客観的に冷静に批評することができるのではないかと思う。この方法には異論も多いであろう。しかし過去において名句は名句であるという理由のはっきりとしない理由で認知されてきた。これはこれでよいのかも知れないが、理由は明瞭であるべきである。この条件の分類はもちろん芭蕉以外の名句にも適応できるものである。
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