名句の季語


 名句の季語を作り替えるとどうなるであろう。おもしろそうな試みである。ではやってみよう。

降る雪や明治は遠くなりにけり      中村草田男

 これはあまりにも有名な句である。さて、この季語を作り替えてみよう。

木枯しや明治は遠くなりにけり
向日葵や明治は遠くなりにけり
熱帯夜明治は遠くなりにけり
夏の海明治は遠くなりにけり
桜散り明治は遠くなりにけり
鯉幟明治は遠くなりにけり
秋桜や明治は遠くなりにけり

 などなど、いくらでもできる。この中で良さそうなものを選ぶとすれば、

向日葵や明治は遠くなりにけり

 であろうか。「明治」も鼻につくので、作り変えることとする。

向日葵や昭和は遠くなりにけり
向日葵や古里遠くなりにけり
向日葵や十代遠くなりにけり

 昭和はまだ鼻につくが、「古里」と「十代」はそうでもないであろう。これで鑑賞できるような気もする。だが、模倣の雰囲気がまだ感じられるので、「十代」の「なりにけり」を何とかしよう。

向日葵や十代遠くなりてける

 まだ、「遠く」がじゃまな感じがするのである。

向日葵や十代遙か彼方かな

 うーん、どうであろう。佳句となったであろうか。やはり名句が重いであろうか・・・。

                                                2007.6.9