俳句と物語
「この句は物語を感じさせるねえ」などと訳の分からないことをいう人がたまにいるのである。俳句に物語を感じるであろうか。俳句は基本的に瞬間を切り取る文学であり、散文世界ではないのである。小説のような物語の世界とは基本的に異なるのである。物語が読みたければ小説を読めばいいのである。俳句は俳句であり、俳句だけを味わうことが大切である。俳句は五七五の切り取られた世界であり、その世界はその世界で完結するのである。隣の世界とはつながらないのである。それでいてその世界は小さい世界ということでもないのである。切り取られた名句の世界は何度想像しても素晴らしいのである。永遠性を感じさせるのである。だがその世界には物語は存在していないのである。勝手な人物が登場することもないのである。勝手に人物を登場させてもいけないのである。その世界は余計なものをはぎ取った世界であり、独立する世界である。仮に俳句に短い物語があったとしても、瞬間を目立たせるための物語であり、従の存在なのである。俳句は俳句である。それ以上でもそれ以下でもないのである。
2007.10.29