俳句のリズム


 俳句は短歌ほどリズムを重んじていない。それは切れ字というものがあり、切れることが句に深みを与えるからであろう。リズムは軽さを感じさせるので、俳句にはそれほど必要がないのかも知れない。
 だが、リズム感のある俳句とは具体的にどういうものであろう。試しに作ってみよう。

亀の子の子亀亀の子石の亀          小山孝治

猫の子の仔猫猫の子仔猫かな         小山孝治

酒の上に酒のしたたる新酒かな        小山孝治

 亀の句は「亀」という言葉を4つ使用し、「子」を3つ使用している。そして「の」は4つである。
猫の句は「猫」という言葉を4つ使用し、「子(仔)」を4つ使用し、「の」を3つ使用している。
 この二つの句には意味がないのである。句の情景も浮かばないであろう。リズムだけを楽しむ句である。またそのように作成したのである。その意味で実験句ということである。だが、詠んでみると楽しい感じがしないであろうか。リズムだけでも楽しめると思うのである。意味を無視したリズムだけの句の存在を、私は感じられたのである。
 さて、酒の句はどうであろう。
 この句には、「酒」の漢字を3つ使用している。しかし、音読みと訓読みの違いがある。また、「の」と「た」を2つ使用している。上の2句と比べて、繰り返しが少なく、また情景が想像できるであろう。その意味でリズムと意味とのバランスがよいと思うのである。
私は上の2句よりも「酒」の句の方が好きなのである。自分の句を「好き」というのは何となく恥ずかしい気もするが、そうなのだから仕方ないのである。
 結論として、意味とリズムのバランスのよい句が望ましいということである。しかし、俳句の場合、「切れ」があるので、リズムには限界があるのだろう。その観点で俳句は意味重視の文学である。ここが短歌と決定的に異なる点であろう。短歌では、リズム感、調べの感じられない歌は決して名歌にはならないのである。意味よりもそちらの方が遙かに重要だという歌人もたくさんいるのである。俳人にはリズムを重視している方は少ないように思う。

           2010.1.30