類想秀句

 いい句ができたのである。それを俳人たちに見せても「なかなかいいですね」という評価である。しかし、
「そのような句は何度か見たことがありますね。あなたが最初の発想者ではないですよ」
 と俳歴が長く俳句の知識の豊富な方が言うのである。それを聞いて、がっくりとなってしまうのである。いくら秀句であっても、過去に何人も同じような発想者がいてはほとんど価値のない句となってしまうであろう。このような句を類想秀句と呼ぶことにする。
 さて、新聞の選者はどのようにこれらを見分けるのだろう。秀句であっても、過去によくある句はなかなか選びにくいであろう。選者は俳句についての多くの知識を持っていなければならならいということである。そう考えると真似のない個性的な句を選択するということであろうか。そんなことを考えながら句を作ると、

降る雪や俳句男は俳句山    孝治

 という句が思い浮かんだのである。私が昔、得意としたシュール系前衛俳句である。少し酒も入っているので、いい気持ちで作っているのである。酒を飲むと過去帰りをしてしまうのである。普段は平明な写生句なのである。この句は恐らく個性的であり、過去にもないであろう。しかし投稿して選ばれるであろうか。恐らく選ばれないであろう。個性的であったとしても、限界があるということである。この辺りを見極めることが大切である。

                                                    2008.1.14