差別用語としての季語
雪女郎とは、雪女のことであるが、女郎という言葉は差別用語である。現在では使用してはいけないのかも知れない。しかし、この雪女郎という妖怪が季語であることが不思議である。妖怪で季語になったものは他にはないであろう。カッパも昔からよく知られた妖怪であるが、季語にはなっていないのである。カッパは夏の季語でもよさそうであるが、楽しそうな妖怪であるので、秀句ができないのかも知れない。
雪女郎の句といえば、次の二つがよく知られている。
みちのくの雪深ければ雪女郎 山口青邨
雪女郎おそろし父の恋恐ろし 中村草田男
この雪女郎ということばを雪女に変えてみよう。
みちのくの雪深ければ雪女
雪女おそろし父の恋恐ろし
どうであろうか。最初とはやや雰囲気が違うであろう。雪女郎という言葉にはやや人間という意味合いが含まれていないであろうか。「雪国のお女郎さん」いう感じがするのである。だが雪女という言葉は、男を凍死させた怖い妖怪というイメージなのである。雪女郎と雪女は同義語となってはいるが、意味合いが少し異なるのである。私は使い分ける必要があると考えるが、雪女郎という差別用語はあまり使用しない方がよいであろう。