祝句

 長谷川櫂主宰がある文学賞を戴いた時、同人会員は祝句を詠むことになったので、技巧を凝らして作った句がこれである。暗喩法を活用した前衛俳句である。

長谷川の両岸満開桜かな    孝治

 要するに、長谷川という川の両岸に並ぶ桜並木が満開に咲き揃い、まさしくわが世の春ですね。ということである。自分としてはうまくできたと思ったのであるが、それが古志誌に載るとあまりよくは言われなかった。
「何か嫌みですね。心がないですね。うわべだけですね」
などと指摘された。
 そんなものなのかと思ったが、よく味わってみると、
「両手に花で、実に結構ですな。まさしく藤原道長の気分ですな。」
とも解釈できるようである。このような句はゴマすり嫌み俳句なのであろう。
 祝句はあまり技巧を凝らさない方がよいようである。技巧は素直な心からは発せられないようである。祝句は上手下手よりも素直さが一番であろう。

                                  2007.8.11