田んぼに関する季語
田んぼは日本を代表する景色の一つであるが、田んぼに関する季語にはどんなものがあるのだろう。角川の歳時記で調べてみた。
春の季語は「春田」であり、冬は「冬田」である。秋は「秋の田、稲田、刈田、ひつぢ田」などがあった。「秋田」という言い方はしないようである。秋田県と勘違いされるからであろうか。また夏は「植田、青田」などがあった。「夏田」という言い方はしないようである。
さて、春田とはどんな田であろう。稲田のように明確に風景が浮かばないのである。歳時記では、稲を刈って春までそのままにしてある田、水をはってある田、げんげの花が一面にさいている田、全体に荒く鋤を返している田などと書いてある。稲田のように特定の風景を差している訳でもないのである。やや抽象的な分かりにくい季語である。
冬田はどうであろう。これは比較的景色が浮かぶ季語である。切り株があり、氷も薄く凍ったりしているであろう。雪が積もっている場合もあろう。でも雪田という言い方はないようである。雪田は雪の原であり、田んぼ風景にはならないということであろう。
秋の田は、明瞭に景色が浮かぶ。つまり稲田ということである。刈田、ひつぢ田なども秋の季語であるが、冬にも見られる景色であり、やはり稲田が代表的な秋の田の季語ということである。
夏田という言い方もないようである。夏田という発音も悪いが、青田という言い方が定着しているからであろうか。青田は風景も浮かぶが、発音もいいのである。夏らしい季語である。
さて、俳句を詠むとしたらどの季節の田んぼが詠みやすいかといえば、やはり秋であろう。表現する季語も多いが、景色が明瞭だからである。青田もイメージがはっきりしていて詠みやすい季語である。だが春田は詠みにくいであろう。いくつもの景色が春田には存在するからである。そう言えば私も今まで春田を句に詠んだことがないのである。
やはり景色の明瞭な季語ほど詠みやすいということであろう。だが詠みやすいので多くの俳人が詠むために、必然的に類似句が多くなるということである。そう考えると春田は詠んでみる価値があるということである。しかし、やはり詠みにくい季語である。歳時記の例句も名句とはいいがたい感じがするのである。イメージはとても大切であることが理解できるのである。
2008.8.20