取り合わせの句

「これは、取り合わせの句ですね」などと聞くことがある。取り合わせとは、「句の中に二つの素材を入れること」らしいのであるが、具体的に考えてみよう。

降る雪や明治は遠くなりにけり    中村草田男

 私の好きな句であり、何度も意図的に見本句として示している句である。同じ句を何度も異なる観点から分析することにより、より具体的にこの句の良さが分かるからである。
 さてこの句は次のように分類できる。

降る雪や(物)+明治は遠くなりにけり(作者の思い)

これは、「物+思い」の構造句である。

閑かさや(空間)+岩にしみ入蝉の声(物)     松尾芭蕉

 これは、「空間+物」の構造句である。
 ここでいう空間とは、手につかむことのできないものということである。母の日などの具体的でない行事や時間の推移も含めることとする。

荒海や(物)+佐渡に横たふ天の川(物)     松尾芭蕉

これは、「物+物」の構造句である。

 つまりこの4つの形式が考えられるであろう。なお「物+意見」の形式が「意見+物」となっても同じ形式と捉えることとする。
 
1「物+物」の形式  
2「空間+物」の形式
3「物+思い」の形式  
4「空間+思い」の形式

 この4つを考えながら取り合わせの句を作ってみると、楽しい・・・という訳でもないが、参考にはなるであろう。さて、4番目の句の例句を示していないのであるが、こんな句でどうであろう。「夕焼けや(空間)+心に広がる思ひあり(思い)」誰の句であるかはこの際問題ではないのである。