運動会という季語、その他
                                    

 運動会は秋の季語とされている。だが春にも運動会はよく行われている。春と秋ではどちらがよく行われているであろう。新潟県の小学校では圧倒的に春の行事であり、中学校では秋によく行われている。また新潟の豪雪地帯では村人参加の冬の運動会も行われている。昔からスポーツ的催しは秋が相応しいとされているが、季感としては春と秋の両方が感じられる。こういう季語はどちらでもよいのではあるまいか。第二季語(季語の分類参照)の一つとして認めてもよいであろう。
さて私は小学校の教師であるが、春・秋・冬の運動会を経験している。一番印象的なものは冬の運動会であった。児童数21名の豪雪地帯の村の小さな学校に勤めたことがある。豪雪地帯は雪かきに追われ冬の楽しみがほとんどない。よって娯楽の一つとして昔から冬の運動会が行われている。小学生だけでなく村中の若者から年寄りまでがほとんど参加するのである。村の行事ではあるが、学校行事としても位置づけられており、計画立案は学校側が行っている。冬の運動会を県教育委員会では認めていないが、村の教育委員会はそんなものはおかまいなしである。村には村の基準があり昔から伝統的に行っているのである。
 前日にグラウンドに雪上車を入れて整備してもらい、大々的に行うのである。村長や村議、校長の挨拶から始まり、雪合戦やそりレース、玉入れ、雪の山作り競争、綱引きやパン食い競争などなど春の運動会よりもバラエティに富んでいる。これが終わってからも宴会があり、景品で出たお酒やビールを飲み、夜を明かすのである。山の教師は酒が強くなければとてもではないが勤まらないのである。
 さて、山での教師の経験は思い出深いものがある。保護者だけでなく村人たちとの親睦が深まり、村人に怒られたこともあったが、いろいろと教えられたこともあった。私の教師経験の中でも最も思い出に残る学校であった。その学校も廃校となり、先日訪れたことがあるが、グラウンドが夏草に覆われていた。そのグラウンドで子供たちと遊んだ出来事が懐かしく思い出された。

   廃校の庭に広がる夏の草   孝治

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