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| むかし、あったてんがな。 ある村にだんなさまの家があったんてや。そこにいとしげなむすめっ子がいたんてや。おっかさまが病気でなくなってからあたらしいおっかさまがやってきたんと。そのごけのおっかさまは、むすめっ子をいじめたんてや。それでついに追い出してしまったんて。むすめっ子は、泣きながら山の中を歩いていたんやが、暗くなってしもうたんてや。ほうしたら向こうにあかりが見えて、その家にとめてもらおうとしたんと。 「こんばんは。今夜行くところがないすけとめてくんなせ。」 その家にははばが一人で住んでいたんやが、 「まあええやろ。」 といってとめてくれたんと。朝になって、 「おめえはきりょうよしだすけ、そのままでは山ぞくにおそわれるかもしんねえ。このばばかわをやるすけ、これを着ていきなや。」 というて、これを身につけるとばばに見えてしまうというばばかわをくれたと。 女の子は、それを着て山をおりたんども、山ぞくどもにと中で出あったんやて。 「こんなきたなげなばばだすけ、かまわんでおこ。」 といって山ぞくどもは、向こうへいってしまったんと。 女の子は山をおりると、村があったと。その村のだんなさまの家で、火たきばさにやとってもらうことになったんやて。 昼間はばばかわをきて、よく働いたんと。夜になると、ばばかわをぬいで、いとしげなむすめっ子になって本を読んだりしてたんやて。 ある夜、その家の若だんなが火たきばさの部屋からあかりが見えたんで、 「今ころ何してんやろ。」 とおもうてそっとのぞいたんやと。するといままで見たこともねえいとしげなむすめっ子がいたんで、びっくりたまげてしまったんやて。そのむすめっ子があんまりかわええんで、すっかり好きになってしまったんと。そのむすめっ子のことばかり思っていたんで、病気になってしもうたんてや。いろんな医者にみてもろうたが、いっこうによくならんかったそうな。 それで、うらない師にみてもろたら、 「これは恋の病気だすけ、若だんなの気にいった娘をよめにすれば治る。」 というたんて。 「どうすればその気にいった娘とわかろうかいの。」 「ここの家の女しょにお茶をもってきてもろうて、それを若だんながのめば、その女しょが嫁になろうて。」 ほうして、その家に奉公している女しょにきれいな服を着させてけしょうさせてお茶を出させたんてや。 でも、若だんなは返事もろくすっぽしなかったんと。 それで火たきばさ一人だけが残ってしまったんと。 「ばざも若だんなにお茶出してみれや。」 といわれたんども、 「わしゃ、いいわ。」 といって最初は断っていたんやが、とうとう行くことになったんて。 ばばかわをぬいで、ふろに入ってきれいな服をきたら、とてもいとしげな娘になったんてや。 「若だんな、ぐあいはどんなだ。」 といってお茶を出したら、若だんなはよろこんでのんだそうな。 それであんばいがよくなったんてや。 ほうして、その娘は若だんなの嫁になって幸せにくらしたんてや。 いちごぶらんと下がった。 |