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むかし、あったてんがな。
ある村にびんぼうなあんにゃとばさが住んでおったてや。二人とも働きもんで、正直やったども、びんぼうばかりしておったと。
「どうして、いくら働いてもびんぼうなんやろな。」
とある夜、いろりに座りながらあんにゃがつぶやいたと。
ほうしると、天井から、
「そりゃわしがいるからよ。」
と声がしてきたんと。
「だれじゃ。」
あんにゃが見上げると、ひとりのこきたねえじさ(じいさん)が天井にはりついておったと。
「わしゃびんぼう神だて。」
「こりゃぶつたまげたな。うちにびんぼう神が住んでおったとは。」
いつから住んでいたんかいの。」
「お前が生まれる前からじゃ。」
「わしゃここが気に入っているすけ、あきらめんかい。」
「出て行ってくれんかいの。」
「いや、だめじゃ。出ていく気はないの。」
「たのむすけ、出ていってくれや。」
とひっしにたのんだども、だめだったと。
ほんでこまってしまい、お宮様にびんぼう神を何とか追い出してほしいと拝(おが)みにいったと。
ほうしると、二人の前にお宮の神様が現れて、
「お前たちは、働きもんで正直だすけ、大黒様をつれてこさせる。」
とおっしゃってくれたと。
家に帰ると大黒様が戸口におってな、
「わしにまかせておけ。」
ほういうと、小づちをふって銅(どう)のゼニをたくさん出してくれたと。
「これをびんぼう神にぶっつけてみろや。」
といったと。
ばさとあんにゃは、いわれた通りに天井のびんぼう神に向かって、
「びんぼう神、出ていけ。びんぼう神たのむすけ、出ていけ。」
といいながら、ゼニを投げたと。
ほうしると、びんぼう神が天井から落ちてきて、みるみる小さくなっていったと。
ほんで、三寸(さんすん、約11センチくらい))くらいになったと。
「たのむすけ、やめてくれ。やめてくれ。」
とふたりに手を合わせてたのんだと。
二人はそれを見ながら、かわいそうになってな、ゼニを投げるのをやめたんと。
「じゃが、お前さんがいるといつまでもびんぼうだすけ、出ていってくれや。」
「わしゃこの家が大好きじゃから、出ていきたくないの。」
「こまったもんじゃ。」
だが、わしゃ、こんなに小さくなったすけ、びんぼうもそれほどせんよ。」
ほうして、びんぼう神はいつまでものこの家に住みついたと。
ばさとあんにゃは、それからもびんぼうはしておったが、正月にもちと魚が食えるようにはなってな、あんにゃに嫁さんも来てくれたと。
いちごブラーンとさがった。
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