ひがん花


むかし、あったてんがな。
あるところに、まずしい村があってたんてや。ある年、ひでりが続き、米がほとんどとれんかったんて。
生まれても子どもが育てられんから、すてたんと。すてる場所は村はずれのとうげだったんてや。
そこにうまれたばかりの赤子を夫婦は置いてきたんと。いつまでもオギャーオギャーと泣き続けたんで、
耳をおさえて夫婦はにげかえったんやて。
風のふく日は赤子の声が村までひびいたんてや。そこである年、赤子の霊をじょうぶつさせるために
おじぞうさんを村の人しょは立てたんと。
秋になるとおじぞうさんのまわりには、たくさんのひがん花がさいたってや。風がふくと赤い花がゆれ、
かなしいくらいうつくしかったんと。
いちごブラーンとさがった。


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