むかし、ある村に、桃から生まれた桃太郎がすんでおったんと。
桃太郎は鬼が島に行き、鬼たちを退治して、鬼たちの宝物を村にもって返り、大っきな屋敷をたて、じっさやばっさとなかよく暮らしておったんてや。
じっとやばっさは年をとっておったんで、何年かして、じっさがなくなり、そしてばっさがなくなったんと。ばっさがなくなる時、桃太郎がどのように生まれたんかを桃太郎に教えてやったんと。桃太郎はすっげおどろき、ばっさの葬式をすませると、桃太郎は旅のしたくをして、自分が流れてきた川の上流をめざして旅にでかけたんと。
何日も何日も歩きつづけたんと。すっと、とても大っきな山があってな。山の中ほどに沼があり、そっから水の流れが始まっておったんと。沼のほとりに大きな桃の木があってな。その木には桃がいくつかなっていたんと。桃太郎は、その桃を一つもぎ取り、刀で二つに割ってみたと。しかしその桃はふつうの桃だったと。他の桃も割ってみたけど、どれもみんな普通の桃だったと。食べてみるとすっげ美味しい味がしたってや。桃太郎はみんな食べてしまったと。満腹になり、沼のほとりで休んでおると、突然、沼の中から大きな龍があらわれたと。
「おい、この桃は神様におそなえするとても大切な桃だて。食べてしまうとはとんでもねえやつだのう。」
といって、桃太郎に襲いかかったと。
桃太郎は刀をさっとぬくと、龍の頭に飛び乗り、頭の角をもって刀で斬りかかったと。龍はその強さにおどろき、こりゃまずいと思い、逃げだしたんと。桃太郎は逃げる龍を追っかけ、山の頂上までやってきたと。そこには大きなお城があってな。龍はその中に逃げ込んだんと。
門の所には、鬼の姿をして番兵がおったんと。桃太郎は鬼のお城かと思い、鬼退治をすることにしたんてや。桃太郎は門の番兵を切りすて、門を開けて中に入ったと。何には何十人もの鬼の姿をした兵隊がいたんやが、みんな切り捨ててしまったと。ずんずんお城の中を入って行くと、奥にすっげえ大きな部屋があったと。そこには、大きな化け物がいすに座っておったと。しかし、役人のような帽子をかぶり、貴族が着るような服装をしていたんと。
「おめえがこの城の大将だな!」
と桃太郎はさけんだと。
「わしはえんま大王よ。所で、おめえはだれだ?」
とえんま大王はいったと。
桃太郎は地獄の裁判官、えんま大王のことは知っておったんで、こりゃまずいのうと思ったんと。よく見るとその部屋は裁判をする部屋のようだったと。
「わしは桃太郎よ」
と、先ほどとはうって変わって少し小さな声でいったと。
「そうか、桃太郎か。おめえのことはよく知っておるぞ」
「どげんに知っておるんだ?」
と桃太郎は聞き返したと。
「おめえは天上の神様の子じゃて。しかし、生まれた時からすげえ乱暴ものだったすけ、桃に入れられて天上界を追放されたんじゃ。・・・おめえはあいかわらず、乱暴者じゃのう。・・・地獄に行くがええ」
そういうとえんま大王は、桃太郎を地獄に落としてしまったと。地獄には鬼たちがいっぺおったと。桃太郎は、鬼を見るとつい退治したくなってな。次々と鬼どもを刀で切りたおしたと。鬼たちは逃げをまわって、鬼たちにとって地獄が本当の地獄になってしまったと。
その様子を見て、えんま大王はここにはおけねえと思い、桃太郎をもとの村に返したと。桃太郎はおのれの生まれの秘密がわかって、これ以上さぐることはねえと思い、この村でずっと暮らすことに決めたと。桃太郎はその村の庄屋の娘をお嫁にもらって、楽しく暮らしたんと。いちごぶらんとさがった。
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