三枚のお札


むかし、あったてんがな。
あるお寺の和尚さんが、小僧さんを山へ花とりに行かせたと。
「山へいってあぶないことがあったら、この札を使うがええ。」
といって、三枚のお札を小僧さんに持たせたってや。
小僧さんは山へいってお花を取ってたんやが、だんだんと暗くなり、気がつくと日がくれそうだったと。
「こりゃ大変だ。はよ帰らねば。」
といって山道をもどったんやが、真っ暗になってしもうたんと。
こまってしまったんやども、向こうに明かりがチカチカ見えたんと。
「これはたすかった。」
といってその家に行ったんやと。
「道にまようたすけ、今晩とめてくんなせや。」
というたれば、ばさが出てきて、
「寺の小僧さんだな。いいからとまれや。」
といってくれたんと。
夜中に小僧さんが目をさましたら、ばさがほうちょうをといでいたんやと。
「小僧をくっちまおう、くっちまおう。」
なとど一人ごとをいっておったと。
それを聞いていた小僧さんは、えらくたまげて、
「山んばだ。はよ逃げねとくわれちまう。」
とおもうて、
「ばさ、ばさ、便所にいかせてくれや。」
といったが、山んばは、小僧さんの腰にひもをむすびつけたってや。
ちっとたつと、
「もういいか。」
とやまんばはいったが、
「まあだだよ。」
といっておったと。
ほうしているうちに小僧さんは一枚のお札を柱にはりつけて、
「お札さま、おれの代わりに返事をしくてださい。」
と頼んだてや。
腰のなわをほどくと、窓から逃げたこてや。
「小僧、もういいか。」
というと、
「まだまだ。」
山んばはあまりにもおそいんで、力いっぱいひっぱったら、柱がおれてしまったそうな。
「おのれ、小僧、にげたな。」
といって後を追いかけたってや。
山んばの足はすごく速く、おいつかれそうになったてや。
小僧さんは、二枚目のお札を後ろに投げつけて、
「大きな川、出てこい。」
といったがや。
すると、山んばの前に大きな川が現れたってや。
けんど、山んばはその川の水をガブガフと飲んでしまったと。
また追いつかれそうになったと。
そんで、三枚目のお札を後ろに投げて、
「大火事おこれ。」
といったがや。
すると、山んばは、さっき飲んだ水を口からふきかけて火事を消してしまったんて。
小僧さんは、やっとお寺に逃げかえることができ、
「和尚さん、山んばが追いかけてきます。助けてください。」
といって、お寺の中にころがりこんだと。
和尚さんは、小僧さんを井戸小屋の天井にかくしたと。
そこへ山んばがやってきて、
「和尚、小僧をどこへかくした。はよ出せ。」
といってお寺の中をさがしたんだと。そんで井戸の中をのぞきこんだら、小僧さんがうつっていたと。
「「小僧め、こんなとこにいたんか。」
といって、飛び込んで死んでしまったそうな。
いちごブラーンとさがった。

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