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| むかし、あったてんがな。 ある日、じさが山の畑をたがやしにいったと。 あっちぇ(あつい)日で、じさはつかれて、 「この畑をだれかたがやしてくれたら、おらの三人娘の一人を嫁にくれるんがのう。」 とひとりごとをいったと。 ほうしたら、その話しをききつけたさるがやってきて、 「じさ、おらがたがやしてくれるすけ、おらの嫁にくんろ。」 ほういうと、さるは、畑をどんどんたがやしたと。 ほうして、じさと娘を嫁にもろう約束をして別れたと。 じさは、ばかなやくそくをしたと家に帰るとすぐなんぎなってねてしもうたと。 ほうしると一番の上の娘がやってきて、 「じさ、どうした。お茶でものむか。」 「お茶はいらねえ。おらがいうこときいてくれるかや。」 「ああ、じさのいうことは何でもきいてやるがな。」 「ほんなら、山のさるの嫁になってくれんかの。」 「何をばかことなこというんな。」 ほういって、かんかんにおこって部屋を出て行ってしもうたと。 次に二番目の娘がきて、 「じさ、なじらて。お茶でものむかや。」 「お茶はいらねえ。おらがいうこときいてくれるかや。」 「ああ、じさのいうことなら何でもきいてやるがな。」 「ほんなら、山のさるの嫁になってくれんかの。」 「何、たわけたこというんな。」 ほういって、かんかんになって部屋を出て行ってしもうた。 次に三番目の娘がきて、 「じさ、なじらて。お茶でものむかや。」 「お茶はいらねえ。おらがいうことをきていくれるかや。」 「ああ、じさのいうことなら何でもきいてやるがな。」 「ほんなら、山のさるの嫁になってくれんかのう。」 「ああ、ええよ。じさのいうことなら何でもきくよ。さるの嫁になってやるこて。」 それを聞いたら、じさの病気はすぐによくなったんて。 ほうしているうちに、さるがやってきて、三番目の娘を嫁につれてったんと。 しばらしくして、じさの家に里帰りすることになったんやと。 「じさへのみやげは何がええかいの。じさは何が好きかいの。」 「じさはもちがいっち好きだいの。」 「そんなら、何に入れていこうかいの。箱にしようかいの。」 「じさは箱のにおいがきらいだすけ、だめらいの。」 「なら、鉢にしょうかいの。」 「鉢のにおいもじさは、きらいだだすけ、だめらいの。」 「それじゃ何にしょうかいの。」 「うすに入れたままのもちがええの。それをぶって(せおって)いった方がええの。」 ほうして、さるはもちを入れたうすをぶったまま出かけたと。 途中の谷川のがけっぷちにきれいなさくらがさいていたと。 「じさはさくらの花が好きだすけ、みやげにもっていこ。」 と娘がいうたら、さるはうすをおろそうとしたと。 「べと(土)におろせは、もちがくさくなるすけ、そのままぶってとってこ。」 と娘はいったと。 ほんで、さるはうすをぶったままさくらの木にのぼったと。 「このえだか。」 「いいや、もっと上のえだがきれいらて。」 ほうして、だんだん上にのぼっていったんやが、ついにさくらのえだがおれてしまったと。 さるは、うすをぶったまま、川の中におちていったがや。 流されながらさるは、 「さるはさらさら流されて死んでいくども、のこされた嫁が恋しや、恋しや嫁が。」 とうたって川の流れに消えていったと。 いちごブラーンとぶらさがった。 |