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むかし、あったてんがな。
虫亀村に利兵衛(りへえ)というごうつくばり(よくばり)の金貸しが住んでいたと。金の返せない者には身ぐるみはいで追い出すような男であったと。村のもんにはきらわれ、おそれられていたと。
あるふぶきのふる晩、二人のごぜ(目の見えない三味線をひく女旅芸人のこと)がやってきて、利兵衛の玄関(げんかん)の前で休んだと。
ほうしると利兵衛が玄関にやってきて、
「こら、おまえらのようなこじき芸人の来るところでねえ。消えちまいな。」
といって二人をゆきのふる中に追い出したってや。
二人はこしまで雪にぬかりながら雪道を歩いていったが、ついに力つきて雪の上にうずくまったと。
二人はどう思ったのか、三味線を取り出して「かどつけうた」を歌いはじめたと。
「ペペンペンペン、ペペンペン・・・・・・・」
「ペペンペンペン、ペペンペン・・・・・・・」
うたと三味線の音は、ふぶきの中を死への門出のようにひびいたと。
それがふっと消えると同時に山から大きな石がころがってきて、二人の上に落ちたと。
ひれから毎年、ふぶきの夜になると、大きな石の下からかどつけうたが聞こえてくるそうな。
村しょは、その石を三味線石とよぶようになり、ごぜのたたりをおそれたと。
それいらい、利兵衛は、心をいれかえ金貸しをやめ、今まで貸した金をなしにして、ほとけの利兵衛とよばれるようになったと。
いちごブラーンとぶらさがった。
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