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むかし、あったてんがな。
二人の猟師(りょうし)がえものをつかまえに冬の山に入ったんてや。
えものがなかなかとれず、帰ろうとしたんが、暗くなってしまい、山小屋にとまったんて。
雪はふぶきとなってなかなかやまなかったんと。二人はいろりに火をたいてうとうとねむったと。
すると真夜中、入り口の戸が開き、白い着物をきた髪の長い色白の女がすうっと入ってきたと。
女は、ひゃっこい息(つめたいいき)でいろりの火を消してしいまい、ほうして一人の男の体にもひゃっこい息をふきかけたと。男はみるみるこおってしまったと。もう一人の男は吾作(ごさく)といい、かべの所でぶるぶるふるえておったと。
女はその吾作をじっとみつめ、しばらく何か考えておったが、
「おい、お前。この夜のことはだれにも話してはいけんよ。もし話したらお前を殺すからね。」
そういうと、女は入り口からすうっと出ていってしまったと。
次の日、雪はすっかりとやみ、青空が広がったと。一人の男はかちんかちんにこおり、死んでおったと。
吾作は女にいわれたようにこのことはだれにもいわんかったと。
吾作は一人もんで、両親も病気で死んでおり、たった一人で住んでおったと。
雪のふるある夜、一人の女が吾作の家にやってきて、
「たびのものですが、道にまよってこまっております。一晩とめてください。」
といったがや。吾作は、
「むさくるしい家じゃが、それでもよければええぞ。」
「はい、かまいません。」
といってその夜、女はとまったんて。
次の日、吾作が起きてみると女は朝めしを作っておったと。
朝めしはとってもおいしかったと。女は出ていくのかと思ったが、そのまま家にいたんてや。吾作も出ていけともいわんかったと。
二日三日そのままとまり、ついには吾作のかかになったしもうたと。
女の名前はお雪といい、親も早くから死んでしまったんと。きょうだいもいなかったんと。
何年かするうちに子らも三人生まれ、幸せにくらしておったと。
ある雪のふる晩、吾作は子らの着物のつくろいをしているお雪の横顔を見ながら、むかしのできことを話してしもうたがや。
「そういゃあ、あの時の女はお前によくにておったな。」
というと、お雪の顔はみるみるかわっていき、あの時の雪女になってしもうたがや。
「お前さんは、やくそくをやぶってしまったね。お前さんを殺さにゃならんが、子らがかわいそうだすけ、命だけはたすけてやる。」
そういうと、かなしげな顔をして、雪女はすっとふぶきの中に消えていったんと。
吾作は外へ出て、女房を探したんども、ふぶきしか見えんかったんと。
いちごブラーンとぶらさがった。
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