航空写真
                   
 毎年、桜木小学校では航空写真を撮っていた。航空写真とは、子どもたちがグラウンドに人文字を作り、その姿を飛行機より撮影するもである。その写真は資料室の壁に飾られてあった。それが五年続いた。
 中山先生が今回撮られた写真を壁に飾ろうとした時、あることに気が付いた。しばらく写真を眺めていたが、ついに決心して校長先生を呼んできた。そして二人で今までの写真をじっくりと眺めた。
「・・・・・やはりそうでしょう。校長先生」
「たしかにそうですね」
「どういたしましょう」
「このことは私と中山先生だけの秘密にしましょう」
「でも、このままにしておいて良いのでしょうか」
「中山先生、コンクリートの粉と砂利とコテを買って来て下さい。二人で何とかしましょう」
 中山先生は言われた通り、それらを買ってきた。そして二人は他の先生たちが帰るまで学校に残った。学校に二人以外誰もいないことを確認すると、二人は屋上にのぼった。満月がこうこうと輝いていた。
 二人は、青いビニールシートを敷き、その上にコンクリートの粉と砂利と水を混ぜて、コンクリートを作った。それをコテで屋上の床のある部分を塗りはじめた。二時間ばかりかかった。
「校長先生、これで分からないでしょう」
「ええ、大丈夫でしょう。でも中山先生、このことは絶対秘密ですよ」
「はい、分かっております。絶対誰にも言いません。妻にもです」
 二人は誰にも言わなかった。
 その年に校長先生は他の学校へ転勤した。そして次の年に中山先生が転勤した。だが、航空写真は毎年撮られ続けた。二人が塗り込めた屋上の床もくっきり航空写真に残っていた。しかし、その場所から灰色の染みが毎年広がっていった。その形は不気味な鬼の顔に見えた・・・・・。

                                            おわり

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