名句小劇場「足駄を拝むの句」
太陰暦4月9日(太陽暦5月27日)
天候小雨
芭蕉と楚良(筆者)は、昼過ぎ光明寺を訪れる。夜まで滞在する。光明寺にはお堂があり、役(えんの)行者のものと伝えられる下駄がそこに安置されている。
楚良「あれが修験道の開祖、役行者様を祀っているというお堂ですか。おや、下駄が安置されておりますな。なかなか使い込んだ下駄ですな」
楚良「ここではあまり失礼なことはいわん方がよいぞ。役行者様を怒らせるととんでもないことになるからな・・・・・・」
芭蕉「おや、師匠は怖いんで・・・・・・」
芭蕉「そうではない。旅に悪いことがないよう、よく祈らんといけないぞ」
楚良「はい、私もそのつもりです。では一つ、祈願の句を詠まないといけませんね」
芭蕉「そうじゃな」
そういうと芭蕉は目を瞑り考えはじめた。そして一句書き出した。
夏山に足駄(あしだ)を拝む首途(かどで)哉
芭蕉
楚良「この意味は、どういうものでしょう?」
芭蕉「これは、『役行者様の下駄を拝むことで、これからの旅の健脚を祈ろう』という意味じゃ。夏山は役行者様には相応しい季語じゃろう」
楚良「確かにそうですね。祈願の一句となりましたな」
芭蕉「さて、楚良。おぬしはどんな祈願の句を詠むつもりじゃ」
楚良「さて、こんな句はどうでしょう・・・」
芭蕉「まてまて、役行者様に対して失礼な句を詠むとこちらまで悪いことに見舞われそうじゃ。間違いのない句じゃろうな」
楚良「・・・多分」
芭蕉「多分とは怖いことじゃ。失礼な句は、書いても口に出してもばちが当たりそうな気がする。よし、楚良の句はわしは聞かないこととしよう」
楚良「ではどうしましょう?」
芭蕉「自分で考えなさい」
楚良「では、捨て去りましょう。私の頭からも・・・」
芭蕉「そうじゃな。無かったことにしようぞ」
二人はよく拝んでから、門人である翠桃宅に向かい、そこで宿泊した。
2008.5.25