名句小劇場「羽黒山の二句」

太陰暦6月3日(太陽暦7月19日)  羽黒山(標高419メートル)に向かう。  天候晴

芭蕉と楚良(筆者)は杖をつきながら、羽黒山に登り始めた。
楚良「羽黒山は霊山霊地の雰囲気が漂っておりますなあ。少し不気味な気もしますね」
芭蕉「そうかな・・・。それ、楚良よ。西の空に綺麗な三日月が出ているではないか」
被っている笠を少し右手で上げて、月を見上げた。そして、芭蕉は書き物を取り出し、一句書き出した。
楚良「師匠、どんな句ができましたか?」

涼しさやほの三か月の羽黒山      芭蕉

楚良「この句の意味は、『霊山羽黒山に涼しい風が吹き、ほのかに三日月が出ておりますよ』ということでしょうか?」
芭蕉「『下界の暑さはここでは感じられぬ。素晴らしいお山だ』という意味も込めてある」
楚良「なかなかすっきりとして、霊山に相応しい句ですね」
芭蕉「処で楚良よ、お前の句はどんなじゃ?」
楚良「はい、もう少しでございます」
暫く考え、一句捻り出した。

風に乗る行者の声や羽黒山     楚良

芭蕉「少し甘いな・・・・・・」
楚良「・・・はい、もうすぐ頂上の本殿です。だいぶ暗くなってきました。先を急ぎましょう」
二人は知り合いの図司左吉(俳人・露丸)に厚くもてなされ、また羽黒山別当代の會覚(えがく)阿闍利に謁見することができた。その夜は南谷の別院に宿をとることを許された。
翌日(太陰暦6月4日)、羽黒山本坊において俳諧を行った。参加者は、露丸・釣雪・珠妙・梨水・円入・會覚・楚良・芭蕉の計8人である。その時の発句がこの句である。

有難や雪をかほらす南谷      芭蕉

楚良「師匠。この句の意味は、『こんな素晴らしい処に泊めてくださり有り難く思います。真夏でも雪が残る南谷に薫風が吹き渡っておりますよ』という意味でしょうか?」
芭蕉「そうじゃ。皆様には本当に厄介になったものじゃ。深く感謝すべきじゃな」
二人は會覚阿闍利にも気に入られ、別院にゆったりとした気持ちで2日目も宿泊することができた。

                                                   2008.5.24