名句小劇場「文月の句」
太陰暦7月6日(太陽暦8月20日)
直江津から高田に向かう。 天候晴れ
楚良「やあ、今夜は星空がとても綺麗ですよ。ずっと雨でしたので、出雲崎以来の星空ですね」
芭蕉「明日は七夕か・・・・・・」
楚良「そうですね。七夕の句でも一つ、詠みますか?」
芭蕉「だが今夜は七夕ではない」
そういうと芭蕉は書き物を取り出してさらさらと書き出した。
楚良「おお、師匠はもう出来ましたか。とても早いですね」
文月や六日も常の夜には似ず
芭蕉
楚良「これは、『7月6日だと七夕も近いので、すでにいつもとは違った雰囲気が夜空に感じられる』という意味でしょうか」
芭蕉「そうじゃ。楚良よ。お前はこの星空を見てどう思う?」
楚良「うーん、そうですねえ。星空を見ることがないんで、いつもの星空のような気がしますよ。」
芭蕉「星空を見ていないお前が、何でいつもの星空だといい切れるんじゃ」
楚良「そうはいっても、あまり違いが分かりません・・・」
芭蕉「それは俳人としての資質にも関係しておるな。俳人としての感性をいつも研ぎ澄まして対象を眺めておると、その違いが分かるもんじゃ」
楚良「なるほど、わしは師匠ほどの感性がございませんから、無理でしょう。多くの俳人が恐らく無理でしょう。どうしたら、感性を鍛えることができますか?」
芭蕉「それは対象をじっと穴が開くくらいまで眺めて、それから想像することじゃ」
楚良「凡人にはなかなか難しいことですね・・・・・・」
芭蕉「修行、修行じゃよ。これしかあるまい。・・・・・・ところで楚良よ。どんな句ができたかな?」
楚良「はい、先ほどから考えているのですが、なかなかいい句ができません」
芭蕉「構わぬ。披露してみなさい」
楚良は句を紙には書かず、口頭で芭蕉に披露した。
七夕の前日雨の降りさうな 楚良
芭蕉「良くない。良くない。まるで雨を期待しているかのような・・・・・・」
楚良「期待してはしておりませんが、良くないのはその通りで、だからいいたくなかったのです」
芭蕉「紙に書いて残さぬ方が良いな」
楚良「はい、残しません」
二人はこの後、高田の細川春庵亭に一泊した。
2008.5.24