名句小劇場「石山の句」

太陰暦7月27日(太陽暦9月10日) 天候晴 小松を出発して山中温泉に向かう。ここで何日か留まる。8月5日那谷(なた)寺に立ち寄る。この寺には珍しい形の石が数多くあり、小さなお堂が岩の上などにあり、古寺といった感じがする場所である。

北肢「ここのお寺は、変わった石がたくさんありますなあ」
芭蕉「ここは花山法皇と関係している寺と訊いてきたんじゃが・・・・・・」
北肢「ええ、そうです。花山法皇が西国巡礼をなさった時、ここに観音様の像を安置されまして、那谷寺と名付けられたのです」
芭蕉「なかなか由緒あるお寺なのじゃな」
そういうと書き物を取り出し、一句書き記した。

石山の石より白し秋の風      芭蕉

楚良「この句は、『石山の白い石よりも、さらに白い秋風が吹いていますよ』という意味でしょうか?」
芭蕉「そうじゃのう・・・」
北肢「しかし、もう一つの解釈がありますね」
芭蕉「ん? それはどういうものじゃな?」
北肢「石山といえば、近江の石山寺を多くの人は思い出しますが、『那谷寺の石は、近江の石山寺の石よりも白く、そこに秋風が吹いていますよ』という解釈が成り立ちますね」
芭蕉「そうじゃな。その解釈もあろう。しかし、近江の石山寺は突然じゃな。わしは考えてもおならかったぞ。この句は素直に解釈してもらいたいと思うが・・・」
北肢「そうですね。そう解釈すべきでしょう・・・・。しかし・・・」
芭蕉「処で北肢殿は、どのような句を詠みましたか?」
北肢「はい、なかなかうまい句が出来ませぬ」
楚良「でも披露なさっては如何です」
北肢「では、一句」

秋風の造りし庭や那谷の寺      北肢

楚良「おお、『那谷寺の庭は秋風が造形したように感じられる』ということですね。確かに秋風が枯葉や土などを運んで来て秋の庭になりつつありますねえ」
芭蕉「秋風が造ったというのは少し大げさにも感じるが、詩心を感じさせるのう。まあまあじゃな」
北肢「ありがとうございます。また推敲したいと思います」
芭蕉「楚良はどうじゃな。一句」
楚良「はい、そういたいのですが、またお腹がいたくなってまいりました。ここで退席させていただきます」
芭蕉「それは大変じゃ。そろそろここを引き上げようぞ」
三人はお寺をすみやかに去ることにした。

                                              2008.6.8