名句小劇場「笠の露の句」

太陰暦8月5日(太陽暦9月18日) 天候曇 楚良はお腹の体調が優れず芭蕉と別れる決心をした。

楚良「師匠、わたしの腹はよくなりそうもありません。このままでは迷惑をかけてしまいます。まだ体力があるうちに、ここでお別れしたく存じます。伊勢の長嶋に知り合いがおりますので、そちらの方に行き、養生いたします」
そういって芭蕉に深く詫びた。
芭蕉「楚良と分かれるのはとても忍びない・・・・・・。だが仕方のないことなのかも知れぬ」
そういって一句、楚良に惜別の句を披露した。

今日よりや書付消さん笠の露     芭蕉

北肢「この句は、『同行二人と笠に書いている書付を消さなければならない。笠についている涙のような露でこれを消そうか』という意味でしょう・・・」
楚良「わたしからも一句、師匠に残したいと存じます」
そういうと昨夜から用意してあった短冊を取り出し、芭蕉に手渡した。

道の辺の骸となれど薄かな      楚良

北肢「読んでそのままの句ですね・・・辞世の句でしょうか」
芭蕉「そんなことはない。きっとまた何処かで逢えるであろう・・・」
楚良はていねいに挨拶をすると、二人より早く長嶋に向かって出発した。
芭蕉と楚良はいつまでも楚良を見送った。
北肢は山中温泉で芭蕉と分かれる予定であったが、引き続き芭蕉と一緒に旅を続けることになった。

                                                 2008.6.8