名句小劇場「きつつきの句」

 太陰暦4月4日(太陽暦5月22日)  天候快晴  那須黒羽藩の家老である浄法寺図書高勝を訪問し何日か宿泊する。高勝は蕉門であり、俳号は芭蕉の桃青の一字をもらって桃雪という。また弟も門人であり、翠桃という。

太陰暦4月5日(太陽暦5月23日) 天候晴れ

芭蕉と楚良(筆者)は、雲巌寺の仏頂和尚山居跡を訪ねた。
芭蕉「おお、ここが仏頂和尚様の山居跡か。それほど荒れ果ててはおらぬようじゃ・・・」
楚良「ええ、このお方は師匠の禅の師匠ということでしょうか?」
芭蕉「そうじゃ。以前和尚は深川付近に住んでおってな。禅の道を教えてもらったのじゃ」
楚良「では一句、詠まねばなりませんね」
芭蕉「そうじゃな・・・・・・」
芭蕉は暫く考えていたが、一句書き出した。

木啄も庵は食らはず夏木立      芭蕉

楚良「おお、できましたか。さて、この句にはどんな意味が・・・?」
芭蕉「それほど難しい意味ではない。『きつつきはそこら中の木に穴を開けてしまう困った鳥じゃが、仏頂和尚様の庵にはその跡がなく、きつつきからも敬われているからだろう』という意味じゃな」
楚良「なるほど、では夏木立は?」
芭蕉「それは庵の周囲の雰囲気を示しているということじゃ。この庵には相応しいであろう」
楚良「たしかに相応しい季語ですね。ただ・・・・・・」
芭蕉「ただ、何じゃ?」
楚良「きつつきは、木を食らうのではなくその中の虫を食らうのでは、つまり、『庵は食らはず』は少しどうかと・・・・・・」
芭蕉「楚良よ、少しは腕をあげたようじゃな・・・・・・」
そういうと芭蕉は中句を書き直した。

木啄も庵はやぶらず夏木立      芭蕉

楚良「おお、『庵はやぶらず』とはまた的確な言葉遣いですね」
芭蕉「さて、楚良よ。おぬしはどんな句を詠んだのじゃ?」
楚良「ええ、名句を前にしてなかなか思い浮かびません・・・・・・」
芭蕉「先ほど書いていたではないか。何故隠すのじゃ。早く示しなさい」
楚良「はい、それでは・・・・・・」


夏木立庵に住むは百足かな      楚良

芭蕉「その句は読み捨てじゃな」
と少し厳しい顔でいった。
二人は再び法寺図書高勝方に戻り宿泊した。

                                             2008.5.25