名句小劇場「小松の句」
太陰暦7月24日(太陽暦9月7日)に小松に到着する。近江屋に宿泊する。
三人は宿泊先でゆったりと風呂に入り、くつろいだ。
楚良「いやいや、なかなか良い処ですな。小松は」
北肢「人情も細かい土地柄ですし、門人もたくさんおりますよ」
芭蕉「そうじゃな。一句できたぞ」
しほらしき名や小松吹萩すすき 芭蕉
楚良「これは、『小松とはしおらしい名前であることよ。秋風に萩や薄がそよぐ様子もしおらしく感じられることだ』という意味でしょうか?」
芭蕉「そうじゃな。それで間違いない。小松への挨拶句じゃ」
北肢「ではこの句を次の俳諧の発句といたしましょう」
芭蕉「いやいや、お前達も詠むがよいぞ」
北肢「では、一句詠ませていただきます」
小松といふ名前の女萩の里 北肢
楚良「小松という女は実際いるのかな?」
北肢「いやいやおりませぬ。架空の女です。しかし小松という名の女はこの萩の里に確実にいるでしょう」
楚良「なるほど、これも挨拶句ということですかな?」
北肢「そういうことになります・・・」
楚良「では私も一句披露いたしましょう」
金沢を出でて小松や萩の里 楚良
北肢「この句の意味はそのまま解釈してよい訳ですね」
楚良「そうです」
北肢「何か歌枕などが隠されているのですか?」
楚良「何も隠されておりません」
芭蕉「何かありそうな詠み振りも句としてはあろうが、この場合月並み句となっておるのではないのか?」
楚良「うーん、その一歩を狙ったのですが、今ひとつなのかも知れません。どうもまたお腹が少し痛み出しました。早めに休みたいと思います」
芭蕉「そうか、早く休むがよいぞ。体が大切じゃからな・・・」
楚良はその部屋から出て、近江屋の主から薬を貰い、早めに床についた。
北肢「楚良殿は大丈夫でしょうか。心配ですね・・・」
芭蕉「そうじゃ。心配じゃ。早く良くなってくれればよいが・・・」
二人も早めに眠ることにした。
翌日、近くの太田神社を訪ねる。
2008.6.8