名句小劇場「武隈の松の句」
太陰暦5月4日(太陽暦6月20日)、白石を出発して岩沼を通り、仙台に入る。途中の笠島には寄らなかったが、武隈の松には寄った。
芭蕉「そういえば、挙白が『武隈(たけくま)の松見せ申せ遅桜』という選別の句をわしにくれたが、この辺りにその松があると訊いてきたが・・・」
楚良「あのう、挙白さんの句の意味はどういうものですか?」
芭蕉「それはじゃな。『遅咲きの桜よ、わしに武隈の松をお見せしなさい』というほどの意味じゃな」
楚良「それでは武隈の松を必ず見物しなければなりませんね・・・。処でその松の何が珍しいのですか?」
芭蕉「それは見れば分かる・・・」
二人は土地の人に訊きながら、武隈の松の処にたどり着くことができた。
楚良「おや、武隈の松は土の際から二つに分かれておりますな。二木の松ということですね・・・」
芭蕉はその松をじっと眺めていたが、書き物を取り出すと一気に書き出した。
桜より松は二木(ふたき)を三月(みつき)越し 芭蕉
楚良「この句の意味は如何なものでしょうか? 少し難しくて・・・」
芭蕉「それほど難しい句ではないが、説明するとだな。つまり、『挙白のいう遅桜の候は過ぎてしまったが、すばらしい武隈の二木の松を三月越しの旅で、確かに眺めることができたものよ』ということじゃな」
楚良「なるほど、よく意味は分かりました。技巧の素晴らしい句ですね。『松と待つ』、『三月と見』、それに『二木と三月』が隠されてますね・・・」
芭蕉は笑ってそれには何も応えながった。
芭蕉「楚良よ、この松で一句詠んでご覧なさい」
そういわれ、楚良は詠むことにした。しかしなかなか思いつかなかったが、雲が二つ松を横切るのを見て、
二つ松の間通るや夏の雲 楚良
芭蕉「うーん、可もなく不可もなしの句じゃな。捻りが一つ足らんな。捻りが・・・」
楚良「師匠ほどの技巧は才能がないので無理です。見たまましかなかなか詠めません」
芭蕉「事実を映した句というものも決して悪くはないが、なかなかびしりと決まるものではない。人が気づかない部分をよく見ないと駄目じゃな」
楚良「はい、よく勉強になりました。よく物を見て、かつ捻りを利かした句を詠みたいと思います」
二人は武隈の松に別れを告げると、夕方、仙台の大崎庄左衛門の宿に到着した。そこで4日間宿泊することになった。
2008.6.6