名句小劇場「瓜茄子の句」
太陰暦7月20日(太陽暦9月3日) 門人の斎藤一泉の玄松庵で俳諧を行う。その時、新鮮な野菜が出された。それを見て芭蕉が提案した。
芭蕉「おお、美味しそうな瓜、茄子ですな。これで句を詠みましょう」
一同はその提案に従い句を詠むことにした。まず芭蕉が最初に句を披露した。
秋涼し手毎にむけや瓜茄子(うり・なすび)
芭蕉
楚良「この句は、『残暑が厳しかったが、この頃はだいぶ涼しくなりました。新鮮な瓜や茄子をそれぞれが皮を剥いていただきましょう』という意味でしょうか?」
芭蕉「そうじゃな。意味は平明であるな」
一泉「いやいや即興で、実に美味しそうな句ができますね。実に大したものです。素晴らしい句です」
北肢「では私が次に一句、披露しましょう」
秋風に育てられたる瓜茄子 北肢
楚良「おお、なかなか素直で分かりやすい句ですね。畑でなっている瓜や茄子が秋風に揺れている風景が浮かびますよ・・・」
楚良「では次に、私が一句披露いたします」
瓜喰めば香や庵に広がれり 楚良
北肢「美味しい瓜の香りがここまで広がってくるような気がしますね。なかなか・・・ですな」
幻灯「では私も一句!」
運ばるる瓜茄子加賀の野菜かな 幻灯
楚良「おお、句に勢いがありますな。なかなかどうして・・・」
幻灯「いやいや、楚良殿には敵いませんよ・・・」
といって幻灯は笑った。
それまで門人の批評を聴いていた芭蕉が少し憮然として、
芭蕉「皆さんの批評を聴いていると、褒め言葉ばかりですな。それでは何も勉強にはなりません。仲間で褒め合ったりばかりしていると、句が甘くなり、堕落の俳諧となりましょう。私は江戸でこのような俳諧をよく見てきましたが、実に哀しいことです。俳諧は道楽と考えている方はわが門から去っていただいても構いません。俳諧の道は厳しく真剣な世界なのです。皆さん、気を引き締めて批評すべきでしょう」
芭蕉の批評を聴いて、門人たちは一瞬に緊張した。そして芭蕉門で良かったとしみじみ感じた。
太陰暦7月24日(太陽暦9月7日) 天候快晴 芭蕉と楚良(筆者)と北肢(筆者)の三人は、金沢を出発して小松へ向かった。
2008.6.7