名句小劇場「夕すヾみ の句」

太陰暦6月18日(太陽暦8月2日) 天候快晴 象潟から酒田へ戻る。

楚良「象潟もなかなか良かったのですが、雨には困りましたね」
芭蕉「今日は快晴で、景色もよく、歩くのもなかなか楽しいものじゃ」
楚良「はて、あそこに見える山が温海山でしょうか?」
芭蕉「そうらしいのう・・・」
楚良「温海山があちらなら、こちらが吹浦ということでしょうね」
芭蕉「そうじゃのう・・・」
そういうと芭蕉は書き物を取り出して、一句書き始めた。

あつみ山や吹浦かけて夕すヾみ      芭蕉

楚良「おお、素晴らしい句ですね。句の意味は『温海山から吹浦にかけての雄大な景色を眺めていると、夕涼みになります』ということでしょうか?」
芭蕉「そうじゃな。それでよい」
楚良「もう一つ、『温海山が吹浦の方を眺めて夕涼みしている』という、擬人法の解釈も可能でしょうか?」
芭蕉「それは変であろう。それならば『あつみ山や吹浦眺め夕すヾみ』となるであろう」
楚良「確かにそうですな・・・。無理な解釈ですね」
芭蕉「では、楚良よ。一句じゃな」
楚良は暫く温海山を眺めて、一句書き出した。

あつみ山眺めて扇ぐ団扇かな     楚良

芭蕉「温泉宿で女が団扇を扇いで、あつみ山を眺めている、ということじゃな」
楚良「何故、女なのです?」
芭蕉「楚良では雰囲気が出んではないか」
楚良「そういうものでしょうか?」
芭蕉「そういうものじゃな」
楚良「・・・なるほど、勉強になりました」
二人は夕方近くになって酒田に到着した。
いろいろな俳諧に招かれたり、名所を見物したりして、太陰暦6月25日まで酒田に留まった。

                                           2008.6.6