大蔵経の碑


大蔵経とは、仏教の教祖であるお釈迦様が説法された教えや仏教の教理を漏れなく記した
仏教経典の全集のことを言いいます。
これを木村家元右衛門が購入し、菩提寺の隆泉寺へ寄進しました。良寛様はその善行を知
り、書き記したのが大蔵経記です。
その大蔵経記を刻んだ石碑が「大蔵経の碑」です。元右衛門は大蔵経だけでなく、それを保
管する経蔵も造って寄進しました。



     大蔵経碑文

我が兄終焉の夕べ、密に我を召し慇懃に属して曰く、「我に夙願有り。一大蔵経を建立せんと欲す
れども、如何せん家貧しくて遂ぐる能はざりき。憾む所は唯だ是れのみ。願はくば爾(なんじ)我が志
を継いで之を成せ」と。言ひ了つて奄然として逝く。爾(しか)りし自り以来、戦戦兢兢、深淵に臨むが
如く、薄氷を踏むが如し。今玆、文政十一戊子年夏四月、所願を果たすことを得たり。実に重担を
脱せしが如し。然るに躊昔の事を思ふ毎に、悲喜交集ひ、涕涙殆ど襟を霑すに至る。主人其の事
を以て余に語り、且之を記さんことを求む。因つて禿筆(とくひつ)を援り以て之を述ぶるのみ。
願主 能登屋元右衛門                                  沙門良寛謹書