乙子神社草庵「たそがれの道」


 
草の庵に寝ざめて聞けばあしひきの岩根に落つる滝つ瀬の音

「粗末な庵に、布団に寝転びながら耳を澄ましていると、岩に落ちている滝の音が聞こえてくることよ」と解釈できる。
 この歌は、乙子草庵時代の作である。現在でも乙子神社の境内にある草庵の裏手に小川が流れている。神社の入り口の鳥井の向かって左側に「たそがれの道」があり、その小道を歩くとすぐに小川に架かる小さな橋がある。そこから上流のすぐ近くに小さな砂防ダムがある。昔はここに小さな滝があったのであろう。その右手上の方に乙子の草庵の裏側が見える。この音を良寛様は草庵の中から聞いて歌を詠んだのであろう。夜だとその滝の音はよく聞こえたことであろう。写実の歌であり、調べもよく、名歌である。