桑原祐雪邸


桑原祐雪は、旧和島村の医師であり、木村家の斜め
向かいあり、すぐ脇を島崎川が流れています。
桑原家は「河童医者」といわれ、その由来を記した良
寛様の「水神相伝」が伝えられています。
また祐雪は晩年の良寛様の主治医のような存在でし
た。


   水神相伝

北越の桑原氏、其の先は賀の人。中ごろ、島崎荻川の上に移って家す。家は世医を業
とし、業余に農をなす。一日農より還り、馬を岸の柳に維ぐ。日正に停午、水神偶出
でて背を曝して候う。その時適人無く、絆を解きて自ら纏い、将に水に牽き入れんと
す。馬躍りて疾走す。水神の力支うること能わず、却って牽かれ廐に入る。馬嘶きて
止まず。家翁往きて之を見るに、一稚子、馬の絆に困しみて啼く。その面血盆の如く、
垂髪肩に及ぶ。翁之を怪しんで、まさに刀をもてその臂を断たんとす。稚子涙を流して云
う。我に霊方あり。之を秘すること久し。幸いに命を賜わらば、則ち之を伝えん。しからず
んば則ち必ず子孫の殃とならんと。翁意謂えらく、是れ水神ならんと。跪いてその絆
を釈き、送りて河に至り、殷勤に別れを告ぐ。その夕、一器を持ちて来る。形香奩の如
く、大さ椰子の如く、函蓋合す。いわく、之を帯ぶれば血痕を治すと。且つ嘱していわ
く、親と雖も、子と雖も、慎んで開くこと勿れと。併せてその薬方を伝う。その薬方は兢
世にいう所の阿伊寿なり。その器は秘して厨庫にあり。此を以て之を験するに、その
験神の如し。尓後その門を叩く者、日夜踵を続く。今より上ること五世の祖なり。始祖
より今に到る蓋し十有三世なり。