良寛様の書簡

※◎○は、資料の重要度を示す。


阿部定珍宛四十八通     

定珍老                                      良寛
今日、酒肴贈被下、辱奉存候。重而永日御面談の上申上度。今日日も夕暮
になり、使もいそぎ候間。早々。以上。
   正月三日
                                           良寛



年始の御祝儀品品贈被下、恭納受仕候。年内ハ御外行被遊、定て御取込入察
候。今日は使之人いそぎ候間、御歌之返辞もあげず候。是は此間の使に候。以上。
   正月四日
定珍老                                          良寛



定珍老                                           良寛
じむばそに さけにわさびに たまはるは はるはさびしく あらせじとなり
                                                良寛



けさはさひをたまはり、うやうやしく納受仕候。
定珍老                                      良寛



昨日は草庵へ年賀之みきたまはり、恭受納仕候。元日のみ歌何もおもしろく存
候。僧もまた、
  あめがした のどけきみよの はじめとて けふをいははぬ ひとはあらじな
定珍老                                           良寛



御紙面拝見仕候。御風邪之由如何候や。御歌猶寛々拝見可仕候。ゆり、酒、
なつとう、恭受納仕候。万葉集十巻御返申候。近き便に、初十巻御借可被下
候。にはかに便有之候間、何事もいそぎ申残候。以上
   正七日                                 良寛
     あすは元日と云夜
 なにとなく こころさやぎて いねられず あしたははるの はじめともへば 



定珍老                                           良寛
御手紙のおもむき拝見仕事候。けさまことに野僧もたふ酔候まま、なにとぞ重てごと
になし可被下候。早々。以上。
                                               良寛



定珍老                                      良寛
此薬は、三条より近づきの医者参候間、淋病之話致候へバ、使にもたせ遺候。
御用被遊、やうすをごらんじ下被下候。以上。
    六月十七日
                                           良寛



定珍老                                        良寛
先日は飯米野菜おくり被下、恭拝受仕候。暑気に而鉢には出でられず候ども、寺
泊外山に托鉢の米よほどあつらへおき候間、御心労被下まじく候。以上。
    七月一日                                    良寛



今日は種々たまはり、恭しく納受仕候。詩歌の御返辞は重て申上度候。御淋
疾もよろしき由。珍重。
   七月十三日
定珍老                                      良寛



定珍老
見事なる茄子、みやうが並盆酒たまはり、恭しく納受仕候。先日の御うた、
別な事もおもひつかず候間、此者につかはし申候。
      秋もやや涼しく成けれバ
   手もたゆくあふぐ扇のおきどころ
                                          良寛
        七月十三日



定珍老
九日之朝御斎参上仕度候。しかしながら独身の事ニ候間、いかやうの事有之
候而違ひ候とも、人を以御知セ申候事もいたしかね候。且老病之身の上に候得
ば、御推察可被下候。明日は人にやくそく致候事御坐候間、参上致兼候。
  いひこふと わがきてみれば はぎのはな みぎりしみみに さきにけらしも
   八月朔日
                                          良寛
  酒一台、茄子一籠、並法でふ、菜、恭受納仕候。



定珍老                                        良寛
今晩は御斎ニ推参可仕存候処、四五日以来疫気にて、不任意候。以上。
    八月八日
                                             良寛



いまよりは つぎてきぎのは いろづかむ たづさへてミよ ひとりふたりを
定珍老                                          良寛



先比久々御意を得、喜悦不斜候。其をりから暮あたりて、強御帰し申候。甚心
ならず候。是は僧も病中ニ物ニうるさく、御まかなひ如何可御不自由ニあらんと思
候へば、わりなくも御帰し申候。御意ニかけ不可被下候。近中ニ天気を見合、一日
御来臨入待候。あまり食事不進候間、梅干御たくはへ御坐候ハバ、少々たまはりた
く候。以上。
    十月十日
定珍老                                        良寛



渡辺村
定珍老
去冬はたうがらし一袋たまはり、今に賞味致候。並ニおん歌、
   あしびきの やまだのたゐに われをれば きのふもけふも とふひとはなし
   正月十六日



此みそ風味には難なく候へ共、あまりしほはやく候間。何卒御かへ度被下候。早々
以上
           十月廿二日
定珍老                                         良寛



定珍老                                      良寛
今日人遺候。何卒みそ御かへたまはる可候。
                                          良寛
   五日



此間之寒気、信にたへがたく候。然ば趙州録一巻、御家に有之候ハバ、被遺度被下
候。以上。
   十一月七日
定珍老                                             良寛



此間はつづきて寒に罷成候。如何御くらし被遊候や。先日は御セ話にあづかり大慶
に奉存候。野僧足もさつぱりいえ候。一齋子へも御ついでに宣伝言。以上。
    二十二日
阿部みき衛門老                                 良寛

               ※阿部きみ衛門とは定珍のこと。一齋とは、医師の藤沢一齋のこと。


此比ハ御疎遠に罷越候。今日は見事なる大根、酒たまハり、辱存まゐらせ候。御歌
かく仕候ども、御心にかなハず候や不知。私、風邪ニて臥セりをり候。そのうへ急の
事ニ候故、かくハいたし候へども。以上。
   しはす八日
定珍老                                        良寛



古訓抄、長々御拝借仕、難有奉存候。王義之石拓、当時御入用御坐無候ハバ、
御拝借奉希候。早々。以上。
   十二月九日
 今年のみそも、ちとしほらしく候間、何卒少々おんかへたまはりたく候。
定珍老                                       良寛



  うつせみの 人もおよばぬ  みやまぎも  はるにははなの さくてふものを
来春は早御目ニかけ可申候。早々。以上。
   しはす廿三日



定珍老
如仰、厳寒信にこまり入候。此比ハ少々うちくつろぎ候。王義之法帖二巻御返
申候。下巻御借被下度候。過し比は、たはしたまはり候。実に妙に候。于今うち
忘、御礼申不上候。頓首。
   十二月廿二日
                                          良寛
 尚々みそ少々御換可被下候。



御歳暮として、酒一樽、にむじむ、ごぼう、あぶらげ、うやうやしくをさめ候。
    としつきハ いきかもするに おいらくの くればいかずに なにつもるらむ
        いささか病中の心やりに
    としつきの さそひていなば いかばかり うれしからまし そのおいらくを
    わがやどを はこねのせきと おもへばや としつきはいく おいらくはくる
      しはす廿八日
定珍老                                        良寛



寒気も少しゆるみ候。如何御暮し遊ばし候や。僧も久風邪にて伏り、御消息も不承候。
何卒古辞記御恩借たまはり度候。早々。
   しはす廿八日
定珍老                                       良寛



    述懐の歌
いそのかみ ふるのふるみち さながらに みくさふみわけ ゆくひとなしに
    臘月廿八日
定珍老                                           良寛



定珍老
歳暮として、酒、野菜、品品たまはり、拝受仕候。殊ニ御歌感吟仕候。暮に
さしあたりて、使の人いそぎ候故、御返しは永春之時を期候。さて私も此風にて大
ニいたみ、此世のものとハおぼえず候しが、三両日ハ少々快気仕候。
                                             良寛
   十二月廿九日



      御かへし
   やまかげの まきのいたやに おとはせねど ひさかたの ゆきのふるよは しるくぞありける
      ふゆのうたとて
   やまかげの もりのしたやの ふゆごもり ひごとひごとに ゆきふれば ゆききのひとの
   あともなし いはねもりくる こけしみづ そをいのちにて あらたまの ことしのけふも 
   くれにけるかも
今日は歳暮の賀とて、種々たまはり、うやうやしくをさめまゐらせ候。さて御歌、いづれもおもしろ
くながめ候。わけておもしろきは、いつとてもの御歌、歳暮の御慶句。書物はいまだ出来ず候。
おつて指上申度候。
    十二月廿九日
定珍老                                                良寛



     あふてよみてつかはす
はながつみ かずにあらぬ しづがみを ながくもがもと いのるきみはも
     おいをなげくうた
みやまぎも はなさくことの ありといふを としへぬるみぞ はかなかりける
としつきの こむとしりせば たまぼこの みちのちまたに せきすゑましを
     はるのうたとて
いづくより はるはきぬらむ しばのとに いざたちいでて あくるまでみむ
    むつき三日
定珍老                                            良寛



与板への書状ハ、十日の日づけに致し候間、十日より天気しだいに、人つかはされ
可被下候。大ぶろしき一枚、小ぶろしき一枚持たせて・荷物小々のこしおき候間、万
葉を国上へ被遺候節、つかはし可被下候。並ニ朱唐紙、朱墨、筆、御忘くださるま
じく、候。もし、万葉略解を御覧じ被遊度候ハバ、二三冊あとへ残し可被遊候。御見
しまひ被成候ハバ、早速持たセ可被遺候。
                                         良寛 敬白
  万葉の二三四五取持仕候。



此間は御疎遠に打過候。然バ与板より、万葉略解参り候や。此者にあつらへつかはさ
る可候。もしいまだ参らず候ハバ、御所持の万葉拝借可被下候。下読いたしおきたく
候。与板へも、早速人遺し可被下候。以上。
    神奈月十六日
定珍老                                         良寛



先日は、ゆりね、雪のりたまはり、恭しく納まゐらせ候。御年も五十にならせ被遊
候と、信に一生は夢の如くに候。このごろかくなむ。
定珍老                                    良寛



定珍老                                          良寛
書状したため候間、寺泊外山へ、もたせつかはさる可候。朱墨少々不足に見え候。
今一丁御ととのへ可被下候。朱唐紙もあらバ、少々か被贈候。以上。
                                               良寛
    十月十七日
定珍老



先日は御返翰恭拝見仕候。如仰寺泊外山へ人遺し候処、書物ハいまだ
不参候と申越候。依之、其由御しらせ申上候。何卒御正し被遊、御拝借
奉希候。頓首。
  かしゆういも受納仕候。
                                      良寛
   十月廿二日



定珍老                                          良寛
万葉書了候間、大坂屋へ御返し可被下候。此次の巻を借度候。それハ此中の状に
委細申越候。何卒明日にも、人遺度被下候。朱墨も残少ニなり候間、一丁たまは
る可候。げたの緒も。並ニ筆一本。早々。かしこ。
   十月廿九日
                                               良寛



御不幸のよし、陰ながら承、信落涙いたし候。
   あまぐもの よそにみしさへ かなしけに をしたらはせし 父のみこはも
灯明、斎料、恭納受仕候。廻向仕可候。別ニ筆一対、朱墨一丁相済候。
以上。
     十一月七日
定義老                                     良寛



右件の書物、大坂屋へ返済度被下候。残りたるは、五六冊に候。餘り寒気にならぬ中、
書しまひ度く候間、何卒御セ話ながら、万葉を早く御取寄可被下候。以上。
とくりもたセ上被候。是ニ油たまはり度候。
    十一月十二日
定珍老                                         良寛



定珍老
     哀傷のみうた拝見致、不覚落涙致候。すておきがたくて、
いやひこの をみねうちこす つづらをり つづやはたちを かぎりとをして
ますらをや ともなきせじと おもへども けむりみるとき むせかへりつつ
もみぢばの すぎにしこらが こともへば ほりかるものハ 世中になし
とほかまり いつかはたてど ひらさかを こゆらんこらが おとづれもなし
     雪の降を見て 主人に代てよめる
しらゆきは ちへにふりしけ わがかどに すぎにしこらが くるといはなくに



   いはがねを したたるみづを いのちにて ことしのふゆも しのぎつるかも
今日は万葉御拝借、辱奉存候。其後又見しまひ候ハバ、此次を御借可被下候。
早々。以上。
   臘月二日
                                            良寛
定珍老                                       良寛 



定珍老                                           良寛
   すぎにし人の事をかにもかくにもわすられぬとききてか
   くなむ
おみのこを いとしとおもはば みたからを うちはふらすな めぐこともひて

   老人のなげかすとききて
おい人は こころよわきものぞ みこころを なぐさめたまへ あさなゆふなに
                                               良寛
   十二月十九日



今朝は品々たまはり、恭受納候。如仰うしは憂にて候。めぐ子は愛子にて候。
    わがいほは くがみのやまと 冬まけて 日にけにみ雪の ふるなべに ふるさと人の
    おともなし ゆききの道の あともなし うき世をここに 門さして ひだのたくみが
    うつなはの ただ一すぢの 岩清水 そを命にて あらたまの ことしのけふも
    くらしつるかも
                                                良寛
     十二月廿八日



をさなき子のすぎたまひしよし、おどろき入候。御施物並酒、恭受納仕候。
野僧も明日廻向可仕候。御歌あはれに候。おつてよく拝吟可仕候。早々。以上
   霜月二十四日
定珍老                                       良寛



僧も此夏は密蔵院へ移候。観音堂のもり致、飯は照明寺ニ而たべ候。一寸御知らせ
申上候。以上。
  ト居観音側  灑掃送餘生
  忽聴斎時板  得得持鉢行
                                         良寛
定珍老                                     良寛


定珍老                                  良寛
見事なる茄子、みやうが、並盆酒たまはり、恭しく納受仕候。先日の御うた、
別な事もおもひつかず候間此者につかはし申候。
      秋もやや涼しく成けれバ
  手もたゆたくあふぐ扇のおきどころ
                                       良寛
     七月十三日



定珍老                                   良寛
野僧も此冬、島崎にて冬ごもり致候。一寸御しらせ申上候
   十月九日



如仰此冬は、島崎のとやらのうらに住居仕候。信にセまくて暮し難候。暖気成
候ハバ又何方へもまゐるべく候。酒、烟草、菜、恭納受仕候。早々。以上。
    しはす廿五日
定珍老                                    良寛



先日大地震、世間一同の大変に候。野僧草庵ハ、何事もなく候。
    うちつけに しなバしなずて ながらへて かかるうきめを みるがわびしさ
来春、寛々御めにかけ申度候。かしこ。
                                             良寛
    臘八
定珍老                                         良寛



今日、御相承、大慶仕候。酒一樽、たばこ、恭受納仕候。今朝は客もあ
り、酒にたく酔候間、逐而御返辞上度候。敬白。
  正月十六日
定珍老                                 良寛



山田杜皐宛十三通

年内、さうめんたまはり候。此十六日、燐家へ参、賞味仕候。其のうまさ、
いまにわすれかね候。早々。以上。
   正月二十日
杜皐老                                 良寛



山田杜皐老                                    良寛
新春の御慶、目出度申納候。去年ハしのぶたまハリ、歓喜之致ニ不堪候。然ば
御状拝見仕候処、筆紙ニ而ハわかりがたく候。御面談之節、御話申上可候。
正月廿日



山田杜皐老                                        良寛
暖気之節、御清安に御暮被遊候や。野僧出雲崎まで参り候得共、少々風気に而、未
帰庵不仕候。此度者椅子並に水瓶、恭しく拝受仕候。敬白。
    四月二十八日



杜皐老                                          すがた
このかたは 事のほか あつさにまかり なり候 与板はいかが 候や
みなつき廿日
                                               すがた



このごろは、をどり手ぬごひたまはり、うやうやしくをさめまひらせ候。
   もろともに をどりあかしぬ あきのよを みにいたづきの ゐるもしらずて
    文月廿五日
                                              すがた
杜皐老                                           良寛



山田氏
御大老御死去の由、にはかに承、驚入候。
   夢かとも またうつつとも おもほえず 君に別れし こころまどひに
     八月廿九日
                                                良寛



   かくこひむと かねて知りせば わすれ草 みちにやどにも うゑましものを
   わすれぐさ たねもとめむと でてみれバ やまぢもみえず 雪はふりけり
今日は、あかざの種、恭しく受納仕候。猶又わすれ草のたね、御たくはへ御坐候
ハバ、たまはり度候間、地蔵堂中村まで御出し度被下候。以上。
    十月廿九日
山田杜皐老                                      良寛


地しんは信に大変に候。野僧草庵ハ何事もなく、親るい中、死人もなく、めで度存候
うちつけに しなばしなずて ながらへて かかるうめきを 見るがわびしさ
しかし、災難に逢時節には、災難に逢がよく候。死ぬ時節には、死ぬがよく候。是ハこ
れ災難をのがるる妙法にて候。かしこ。
                                           良寛
     臘八
山田杜皐老                                    良寛
     与板


何卒、白雪糕、少々御恵たまはり度候。餘の菓子は無用。
                                        沙門良寛
     十一月五日
山田杜皐老
                                           良寛



        すゑのみこのみかりますときき
  こをもたぬ  身こそなかなか うれしけれ うつせみのよの 人にくらべて
        ひたしおやにかはりて
  かいなでて 雄日手浸してちふふめて けふは枯野に おくるなりけり
        みこのためにみ経をよみて
  みこのために いとなむのりは しかすがに うきよのたみに およぶなりけり
御発句殊に感吟仕候。早々。以上。御布施恭納受仕候。
   十一月初九日                                   良寛
杜皐老



先比は帽子たまはり、恭納受仕候。
    しはす廿八日
                                          良寛
杜皐老                                      良寛



山田杜皐老                                      良寛
さざなみ帖の歌、落候処に字を樹候ども、おぼつかなく候。大目に御覧可被下候。
由之居士にも御聞合被遊てよかるべく候。
    廿三日                                     からす



山田杜皐老                                良寛
今日赤人たまはり、うやうやしく納受仕候。
   火とわれと さむし すき間風 いづくもおなじ おいらくの身は
                                        良寛
十二月廿七日




山本由之宛十六通

人も三十四十を超ては。おとろへゆくものなれば随分御養生可被遊候。大酒飽淫は実
に命をきる斧なり。ゆめゆめすごさぬやうにあそばさるべく候。七尺の屏風もをどらば
などか越ざらむ。羅綾の袂もひかばなどかたへざらむ。おのれほりするところなりとも、
制セばなどかやまざらむ。
すもり老                                        良寛

                                 ※すもり老とは、山本由之のこと。


過此御話申上候石碑、出来到候由、先日の御文ニ見え候。其立テ処は、此庵の
あたりにてよからんと申候ヘ共、村之長に語り候ヘバ、不得心の趣ニ候間、其辺に
てよろしき場処ニ御建可被下候。カウノモノ近年たべぬよきふう味ニ候。一ウラ印ノ
線香ニ把、春までに与板より御取寄セ可被下候。まゐり候ハバ、其地ニ御留め置可
被下候。

            
     十一月十八日
巣守老                                          良寛



由之老     
    このごろ出雲崎にて
たらちねの ははがかたみと あさゆうに 佐渡のしまべを うちみつるかも
いにしへに かはらぬものは ありそみと むかひにみゆる さどのしまなり
くさのいほに あしさしのべて おやまだの かはづのこゑを きかくしよしも
                                               良寛
   二十二日



此あひの寒にいかが候とおもひ候処、便承安心いたし候。力つくまでは御用
心可被遊候。出雲崎おゆうことも、下血の全快いたすまでは、たゆみなく養生いたす
やうに馬之助方へそこもとより申可被遺候。疱瘡も此あたりへも、いまだまゐらず候。
おふくは来春之事に有之候。野僧は此冬ハ寒さまけもなく候。
おます方より、米の事申こし候へども、なくなり候ハバ、此方より申し可遺候。別に
書状ハしたためず候。よろしく伝言たのみ入候。
由之老                                        良寛



此夏ハ、まことによろしき気候ニ候。古今後集なりともなになりとも、少き者のよミて
よき歌書有之候ハバ、一両巻御借たまはるべく候。以上。
    文月七日
                                           良寛
由之老                                       良寛



おいのみの おいのよすがを とむらふと なづさひけらし そのやまみちを
あしびきの やまのもみぢは さすたけの きみにはみせつ ちらばこそちれ
もたらしの そのふのこのみ めづらしみ みよのほとけに はつたてまつる
いかにして きみいますらむ このごろの ゆきげのかぜの ひびにさむきに
あしびきの みやまをいでて うつせみの ひとのうらやに すむとこそすれ
しかりとて すべのなければ いまさらに なれぬよすがに 日をおくりつつ
     十二月六日
                                                良寛
由之老                                            良寛



先日書状あげ候へ共、此度好便有之候間、又申上候。石地のないとうより三音考御
借被下候や。若し御宅まで参候はば今日被遺下度候。以上。
    十一月十日                                良寛



由之老                                           良寛
   あさもよし きみがたまひし さゆりねを うゑてさへみし いやなつかしみ
三音考ハ李平セ話にて、信に石地よりまゐり候。
    十二月廿五日


目ぐすり入の壺のふたによろしく、◎これくらゐの形を見だしたまはりたまへ。
  よの中に 恋しきものは 浜辺なる さざえの貝の ふたにぞ有ける
由之どのへ



由之老                                             良寛
     ひさしくかぜになやみぬ。いえがたになりて
おぼつかな ふぢのさかりも すぎぬらむ たびのやどりに たれこめてわが
                                                  良寛



    某の禅師集たまふみ経のすでにほろびむとするを
    なげきて 是ハ曾てよめる
あしびきの 西の山びに ちかき日を 招きてかへす 人もあらぬか
    み経のふたたびみ寺に帰るを見てこれの主人のみこころ
    を悦て
あさもよし きみがこころの まことゆも 経はみ寺に 帰るなりけり
由之老                                           良寛



先日きず薬たまはり候。文をわたす人のそさうにて、やうやく昨日うけとり候。また山
のいもたまはり賞味仕候。さしあたりてなにもいりようのものの無之。このごろしほいれ
をもらひ候。その形
       
そのふたなく候。さざいからのふたよからむとおもひ候ども、この方にはなく、その御
地に有之候ハバ、二つ三つたまはり度候。おほきなるよろしく候。
    その大きさ  
世の中に こほしきものは はまべなる さざいのからの ふたにぞありける
 臘八                                           良寛



由之老                                              良寛
敷島の 大和の国は 古ゆ 言あげせぬ国 然れども 我は言あげす 過ぎし夏 弟のたまひし
つくり皮 いや遠白く たへのほに ありにし皮や わがいへの 宝と思ひ 行くときは 
負ひてもたらし 寝る時は 衾となして 束の間も 我が身を去らず 持たりせど 奇しきしるしも
いちじろく 有らざりければ 此の度は 深くかうがへ 殊更に 夜の衣の 上にして 其がうへに
我が肌つけて ふしぬれば 夜はすがらに うまいして ほのりほのりと 深冬月 春日に向ふ
心地こそすれ 何をもて 答へてよけむ 玉剋 いのちにむかふ これのたまもの
しかりとも もだにたべねば 言あげす 勝ちさびをすな わが弟の君



ありそみの おきつみかみに まひしなば さざいのふたは けだしあらむかも
由之老                                           良寛



ふとんたまはり、うやうやしくをさめまゐらセ候。春寒信にこまり入候。然ども、僧
ハ無事に過候。ひぜむも今ハ有か無かになり候。
  かぜまぜに 雪はふりきぬ 雪まぜに 風はふききぬ うづみびに あしさしのべて
  つれづれと くさのいほりに とぢこもり うちかぞふれバ きさらぎも ゆめのごとくに
  すぎにけらしも
  つきよめば すでにやよひに なりぬれど ぬべのわかなも つまずありけり
         みうたのかへし
  極楽の 蓮のうてなを てにとりて われにおくるは きみが神通
  いざさらば はちすのうへに うちのらむ よしや蛙と 人ハいふとも
    やよひ二日
由之老                                         良寛 



このよらの いつかあけなむ このよらの あけはなれなば おみなきて ばりを
あらなむ こいまろび あかしかねけり ながきこのよを
由之老                                        良寛




中村権右衛門宛五通

ヒゼンの薬、進上。
・製法 くるみとしやうがとやかす。
湯華 三十め。
くるみ 三十目。皮をとり、みのことに候。
荊角子 五十目。さいかちいばらのとぎなり。
ゆばなとくるみをすりばちにいれて、よくすりまぜて、しやうがの汁にて手にぬりつける
也。
しやうがにつけようと思ふ一日もさきに、土にうめて水をかける也。さすればしぼり汁よ
く出る故に。
・つけやう
荊角子は水にてせんじる。
薬を手につけてひるを待ち、荊角子のせんじ湯を金だらひやうのものにいれ洗、金だら
ひは洗たびごとにあらためる。かつてよき為也。
・効能
手につければ、身うちのヒゼンもなほるという事也。ヒゼンかうじたる人は、二廻りも三
廻りも。
・良寛が思はく
薬を遺はし候ゆゑは、初は私つけようと思ふて医者のところよりならひ候得共、あま
つけさつしやれといふことにはなく候。おぼしめしにまかせなさる可く候。
    九月廿九日                                    良寛



古事記を二十日ばかり、御拝借度被下候。当秋ぬぎおき候ぬのこは、わたをぬき可被
下候。袷にいたし度候故。
    十月二十六日
中村権右衞門老                                       良寛



中村権右衛門                                    良寛
今日は人被遺、種々おくり被下、辱候。其時節、のなかさいの上人被参、濁酒を
のみ、病心をなぐさめ候。
   いかにして くらしやすらむ これまでは ことしの冬ハ まことこまりぬ
    十二月廿六日



此のぬのこ、御あづかり度被下候。
                                          良寛



米を此人に遺度被下候。銭は御とどめおき可被下候。以上。
     七月一日
中村氏                                      良寛




解良叔問宛二十一通

青陽之御慶賀、何方も目出度申納候。然ば旧冬は、もち、やうかん、恭受納仕候。
尚永日之時期候。敬白。
   正月四日
                                          良寛
叔問老                                     良寛



解良叔問老
新春之御慶、目出度申納候。随而野僧無事ニ嘉年仕候。年内は御歳暮、恭
受納仕候。此間之寒気、如何御暮被遊候や。御相度承如斯候。頓首
   正月四日
                                       良寛



叔問老
是はあたりの人に候。夫ハ他国へ穴ほりに行きしが、如何致候やら去冬は帰らず。こ
どもを多くもち候得ども、まだ十よりしたなり。此春はむらむらを乞食し而、其日を送り候。
何ぞあたへて渡世の助にもいたさせんとおもへども、貧窮の僧なれバ、いたしかたもなし。
なになりと少々此者に御あたへ可被下候。
    正月四日



陽春御慶、一同に目出度申納候。年内は品品歳暮たまはり、たしかに落手仕
候。私も旧冬より風ひき、いまにとぢこもり候。しかし此間は漸快気致候。御安
じ被下まじく候。以上。
   正月九日
解良叔問老                                    良寛



今日は、こんぶ、たばこ、たしかに相とどき候。先日は菊のみそづけたまはり、珍賞味
仕候。且又、貧人に餅多くたまはり、大慶ニ奉存候。暖気催候ハバ、参上
度仕候。敬具。
   正月廿日
解良叔問老                                      良寛



先日草庵へ御来臨の翼日より、又風をひきかへし候。一両日以来、人心に罷成候。
書写致候法華経、指上候。病中ゆゑ筆力無候。御免可被下候。紙は使尽候。
筆は御返申候。以上。
    二月十一日
                                               良寛



先日草庵へ御来臨被遊日より、又風をひきかへし。漸く一両日以来、快気
仕候。未長髪にて、とぢこもり。法華経書写仕候。呈上致候。病中故、
何の筆力無。御免可被下候。
                                      良寛



暑に如何被遊候や。野僧いたみも漸いえ候。絹地たしかにうけとり候。
    林間倒指已六十
    一箪一瓢送餘年
    世上富貴雖可羨
    竹子時節不得間
       六月十二日
叔問老                                 良寛



久く風邪ニ而ふせり、やうやう近日よく候得共、于今すきとハいたさず候。洲尾老より
草稿落手仕候。猶又烟草一袋、恭受納仕候。近日尊顔を得、寛々申上度。
稽首
    七月十日
解良叔問老                                       良寛



御紙面拝見仕候。隆暑の節、御上京の方方無滞御帰宅被遊、御安心入察候。
方丈へ上候ハバ、御話申可上候。
    七月十四日
叔問老                                      良寛



先日は米、辱奉存候。其節、野菜沢山ニたまはり、恭受納仕候。もはや
すずしくなり候間、遊行仕存候。めぐりめぐり御地へも参上可仕候。早々。
以上。
   八月二日
                                        良寛
解良叔問老



   先日はてぬごひ、とうふ、菊、落手仕候。
今朝は御手紙、辱拝見候。僧も一両日以前帰庵仕候。何やかやとり乱、
冬のしたくもいまだととのはず候。少し間に成候ハバ参上。仕度候。山住の身さ
へ閑ならぬに、世に交じる人ハ、いかがあるらむと、おしはかられ候。
   何事を 営むとしも なけれども 閑にくらす 日こそすくなき
     十月五日
叔問老                                       良寛



先日は御紙面辱拝見仕候。寒気の節、弥御雄勝に御被遊、大慶ニ奉存
候。野僧無事ニ罷過候。わすれ候餅、並ニ托鉢の米、落手仕候。従是冬ごも
りのしたくに候。来春ハ早速御目ニかけ可申候。以上。
  柴焼てしぐれ聞夜となりにけり
   十月五日



寒気如何御暮被遊や。住庵無事罷過候。然米、もち、茶、烟草、菜等、い
ろいろ被下恭受納仕候。さて歳暮御贈物は、今日受取候間、別ニ遺ハさるる
事ハ御無用ニなし可被下候。与板御隠居、如何候や。来春早々御目ニ入御礼申上可
候。以上。
   十一月廿日
解良叔問老                                      良寛



久しく御相不承、如何御暮被遊候や。野僧此間、やうやく達者ニ罷成候。先日
ハみそ豆、辱奉存候。飯米あちらこちらからもらひ、当年も沢山に有之候間、
さやうにおぼしめし可被下候。御子息も江戸へ発足被遊候由、時節がら御案じ
可被遊候。さて御気分は如何候や。御療治被遊候ても可然候。酒食に御心付
可被成候。物に屈宅セぬやうに可被成候。一つはしじこほりかと思候へば、当年もわ
づかになり候ば、若菜摘ころ参上致、御清話可申上候。早々、以上。
     十一月廿二日
解良叔問老                                       良寛



先日は御手紙辱被見仕候。如仰歳暮御取込、信に入察候。其節ナンバン、
ナスビ、過し比ハ、ミソマメ、辱奉存候。野僧ハ此冬は暖ニて、食物も春まで
のたくはへ有之、安隠に過候間、御あんじ下さるまじく候。以上。
    十二月廿六日
叔問老                                    良寛



先比は歳暮之御贈物恭受納仕候。烟草も落手仕候。殊にみそ豆、忝
奉存候。野僧此比は寒気にて、せんき起候処、かセゆいも夜々焼てたべ、快気
仕候。猶期永春之時候。敬白。
  臘月廿六日
解良叔問老                                   良寛



先日は寛々御目に懸、喜悦仕候。さて帰庵の後、病気もだんだん平愈至、鉢にも両
三度出候得ば、米も一斗あまり有之間、当(以下、無し)
解良叔問老                                     良寛



新春の御慶、何方も目出度申納候。然ば旧冬は頭巾並野菜、恭受納仕候。
五百金之御発句、誠感吟仕候。以上。
    正月三日                              良寛
解良氏



先日は久々にて御面談仕、大悦奉存候。然バ道風の石ズリを貴宅ニ失念仕、
甚不安心に候。御むつかしながら御尋被下、此者にもたせ可被下候。
     ウワガミは丸いコガタ
   
     初ニ
  散々難・・・・
もし主人の御るすにてしれず候ハバ、是をふちやうにして御尋可被下候。以上。
                                               良寛
    正月十三日
解良氏                                           良寛
 用事



寒気の節、御清和御凌被遊候や。野僧無事ニ罷過候。いつぞやおき候米、つかは
され可被下候。かやは宝珠院へあつらへおき候間、ぬす人のきづかひ無之候。此度
ハ返さい不仕。
                                              良寛
  十一月十六日
まきがはな
解良氏                                          良寛




解良孫右衛門宛三通

久々御目ニ不懸候。如何御暮し被遊候や。当春ハ御隠居も御親父も、事の外御よ
わり被遊候。貴公御帰国の事をのみ、朝夕仏神へ御祈禱之やうすに候。此度御使の人
と御同道ニ而御帰可被遊候。若さなく候ハバ、生涯親子の対面も不可有之候。一旦
の楽ニおぼれ、長く其身をうしなはん事ハ、返々も口惜事に不候や。若仏の御恵ニ離
れ、天のあみにかかり候ハバ、其時くゆともおよばぬ事ニ候。つらつら生としいけるも
のを見るに、皆生涯の計ハあるぞかし。如何御年少なれバとて、すこしハ御推察可被
遊候。野僧も貴公のために心肝をくだき、いろいろ思慮をめぐらし候得ども、更ニ外の
てだて御坐無候。ただただ御帰国の趣、一決可被遊候・以上。
                                               良寛
     五月十二日
解良孫右衛門殿                                     良寛



先日は、御手紙辱拝見仕候。行たき事は飛たつばかりに候得共、病後故道中を
はばかり候。若命あらバ、期来年之時候。何卒飯米を少々。
解良孫右衛門                                   良寛



先此は、御年始恭受納仕候。私も一両日このかたは風邪も少快候。御登
山の節、茅屋へも御立寄奉待候。以上。
                                      良寛
    正月十三日
解良孫右衛門老                            良寛




解良義平太宛一通

先日は御出之処、早々ニ候。其節御話申上候子美全集、今に不参候。途中ニ滞
候や。もし御失念に候ハバ、早速被遣可被下候。以上。
    三月十八日
解良義平太老                                     良寛
      用事



解良熊之助宛三通

今日は歳暮として、酒、米、餅、並菜等恭しく納受仕候。使の人のいそぎ候間。
早々以上。
                                           良寛
    十二月廿九日
解良熊之助老                                  良寛



厳寒の節、御平安の便承喜悦仕候。野僧無事に住庵致し候。御安心可被下候。
酒、米、香、燭、たばこ、もち、おくり被下、忝納受仕候。春永に寛々参上致候。
以上。
    十二月廿一日                               良寛



寒気之時節、如何御凌被遊候や。野僧無事に罷過候。今日人遺候。何卒大豆一
斗度被下候。ぬのこはふろしきもたせず候間、重ての使に可被遺候。御入用無バ、
   よよひん度被下候。以上。
   十月廿三日
解良熊之助老                                    良寛




解良新八郎宛一通

今日、餅恭受納仕候。然僧も無事ニ罷過候。寒中御保養可被遊、第一御
心づかひ不可被遊候。酒もすぐしてあがらぬやうに可被遊候。何卒のどかな
日よりに、一日がけに参上度仕候。以上。
    十二月七日
解良新八郎君                                 良寛



解良栄重宛一通

正八老                              良寛
是をあおづへ、御とどけ被下度候。
                                  良寛

                 ※正八とは、解良栄重のこと


維馨尼宛五通

先日は久々ニ而御目にかけ、大慶奉存候。僧も此比、無事ニ帰庵仕候。今日、
御話申候万葉借ニ、人つかハし候。権平老ニ、よろしきやうに、御申可被下候。
猶又、寒中御保養第一ニ被遊可候。
    十月十日
維馨老                                     良寛



此比冬はあまり寒くもなく、無事に打暮し候。僧庵被遊候ハバ、如何御坐候。少し寒気
をふせぐ御用心可被遊候。来春托鉢のをり参上仕、御目ニかかり、お話申上度候。
早々。以上。
  十一月廿日
                                                良寛
維経老



江戸ニ而
維経老                                 良寛
君欲求蔵経  遠離故園地
吁嗟吾何道  天寒自愛
   十二月廿五日
                                      良寛



     中山より
三輪
德充院老                                     良寛
恩病気如何御坐候や、随分心身を調ふるやうにあそばさるべく候。
油一とくりたまハる可候。
   十月八日



 正月十六日
春夜二三更 等間出柴門
微雪覆松杉 孤月上層巒
恩人山河遠 含翰思万端
つきゆきは いつはあれども ぬばたまの けふのこよひに なほしかずけり
与板 大坂屋
維馨老尼                                               良寛




鈴木隆造宛五通

九夏三伏日 吐灑四支萎
如夢復似幻 三日絶飲食
故人贈良薬 擣簁色香美
起坐恭一甞 通身覚爽利
                              良寛
隆造老



蕭条老朽身 借此草庵送歳華
春来如有命 鳴錫一過夫子家

天放老人                         良寛

  ※天放老人とは、医師の鈴木隆造のこと。弟が文台


無能生涯無所作
国上山巓托此身
他日交情如相問
山田僧都是同参
                               良寛
     酬
天放老人



千峰凍雲合 万径人跡絶
毎日只面壁 時聞灑窓雪
天放老人                        良寛



先日は、御紙面辱拝見仕候。太白集前ニ一覧仕候。子美全集御覧被遊而後、
拝覧度仕候。渠乃観国老人ニも、兼其事申置候。
  千峰凍雪合 万径人跡絶 千峰凍雪合し 万径人跡絶ゆ
  毎日只面壁 時聞灑窓雪 毎日只だ面壁 時に聞く窓に灑ぐの雪
    十二月九日
鈴木隆蔵君                                         良寛



鈴木陳造(文台)宛三通

草庵風雪裡 一投相思詩
不知何以報 含翰愧所思
ひさかたの ゆきふみわけて きませきみ しばのいほりに ひとよかたらむ
陳造老                                          良寛



孟冬是十月
寒雨正霏霏
不堪寂寥出門去
宛逢故人贈新詩
陳造老              良寛



冬日蕭蕭晴復陰
欲行不行暫彷徨
忽逢故人促対酌
援毫難裁此時情
陳造老              良寛



入軽ゐ六右ヱ門老宛一通

入軽ゐ六右ヱ門老
昨日は濁酒一樽、恭しく受納仕候。                          良寛
   大かたの よを六つまじ九 わたりなば 十に一つも 不足なからん
   小正月 いはふ松の 七五三 丑につけこむ 十分の福
     正月十七日
                                                良寛



鳥井直右衛門宛二通

つるがや御隠居
此間暑気甚候。如何御暮し被遊候や。野僧無事に打過候。然バ近き中ニ御経
読誦ながら、こなたの草庵へ御出の由承候。僧も老衰いたし、万事にものうく候。
此事ハ御とどめ被遊てしかるべく候。早々。
                                           良寛
     六月九日

                        ※つるがや御隠居とは、鳥井直右衛門のこと。


鳥井直右衛門老                                    良寛
澄清堂の臨書、昨日落手仕候。並ニ臨書の孤霊照女の旧作は、此画ニちと不相応ニ
候間、太白が句を以賛候。花立へも参上仕度候ども、此度はあたりを遊行度致候。
以上。
       三月廿九日
                                               良寛



桑原祐雪宛六通

先日は久々にて御尊顔を得、大慶ニ奉存候。然ば、はだぎを失念致候やうに覚
候。もし有之候ハバ、此物に持セ度被遺候。以上。
   三月下旬
桑原祐雪老                                     良寛
       従寺泊



私も夏中少々不快にて、服薬仕候。其後とかく力つかず候。四五日以後、涼ニ
罷成候而、さつぱりと快気仕候間、御安心可被下候。今日は一樽被下、信に
珍しく賞味仕候。盆後に推参致候節、御面談申上度。以上。
    七月十四日
桑原祐雪老                                   良寛



今日は子足御来光、御相承大悦奉存候。盗賊の難、世間の人のうはさに候。
涼しく成候ハバ、参上仕度候。以上。
    八月三日
桑原祐雪老                                  良寛



今日人被遺、御相承大慶。当方寒気節、無事に罷在候間、御安じ
不被下候。御酒一樽炭二表、恭受納仕候。春掛御目寛々御清話申
度上候。以上。
                                     良寛
   十一月廿一日
桑原祐雪君                             良寛



厳寒之節御相承、大悦仕候。僧も御薬ニ而此節は全快気仕候。炭二表酒一
樽、恭受納仕候。然ば来春、寛々御物語申上可候。使もいそぎ候間。早々。
頓首
      臘月一日
桑原祐雪老                                良寛 



今日は御遊来、大悦奉存候。如仰今年は寒気もうすく、凌ぎ安く候。僧も先
頃までは不快にて臥てばかりをり候、此間は快く候。御安心可被下候。例年の通り
炭もたせ被遺、千万難有候。当年はこたつも出来候て、つがふよろしく候。並に御
酒一樽、恭拝受仕候。以上。
桑原祐雪老医                                    良寛



桑原祐順宛一通

今日唐紙被遺候得共、何になるのに候やら知れ不申候間、先止置候。野僧がおも
はくならば、一枚唐紙書がかつてに候。若御ぼしめし有之候ハバ、唐紙のきりやう
を仰可被下候。
    十一月二十八日
祐順老                                         良寛




中原元譲宛一通

暖気之節、如何御暮被遊候や。野僧も此程は漸快気仕候。先比は私するに痰
の薬、宇治之茶、相とどき候。此度ハ酒、なむばんづけ、恭納受仕候。懐素自
叙帖之事ハ、書けバ長く成候間、此人に御尋被下度候。以上。
     三月廿九日                               良寛
中原元譲老                                    良寛



原田鵲斎宛一通

此四月十六日、光枝老人死去被致候。其事は渡辺酒造右衛門殿方へ、申来候。
御知せ申上候。以上。
 なにごとも みなむかしとぞ なりにける なみだばかりや かたみならまし
  六月十七日
鵲斎老人                                       良寛



原田正貞宛九通

如仰新春之御慶、目出度申納候。今宵御酒一樽をさめ候。寒気も此ごろはゆるみ、
僧も漸く快候。御歌。
  はるといへば あまつみそらは 霞そめけり やまのはに のこれるゆきも はなと
  こそみめ
    正月四日                                     良寛
正貞老



如仰新春の御慶、目出度申納候。随而野僧無事ニ住山仕候。猶
期永春時候。頓首。
   正月廿一日
                                   良寛
正貞老                               良寛



如来意、陽春の嘉慶、何方も目出度申納候。此比は御風邪の由、猶餘寒節、御自愛
可被遊候。酒一樽。
 樽ハ後の使に。
正貞老                                           良寛



  おいぬれば まことをぢなく なりにけり われさへにこそ おどろかりぬれ
僧も此冬は寒気にまけ、心もちあしくなり候処、 このごろは寒さも少しゆるみ、つづい
て快気いたし候。をりから、酒、たばこ、さたう、くずこ、並に御歌たまはり、おもほ
えず老心をなぐさめ候。
  我さへも ゆきげのかぜの たへなくに とはせるきみか おいのみにして
    十二月十八日
正貞老                                          良寛



正貞老                                             良寛
   はるののに わかなつまむと さすたけの きみがいひにし ことはわすれず
歳暮賜はり恭受納仕候。
                                                  良寛
  しはす廿九日



いそぎ候間、おち候事も可有候。酒、たばこ、恭納受仕候。
   あるかひも なぎさによする しら浪の かへらぬとしを なになげくらむ
まなく。まなくはひまなくなり。つづきいかが。
   をしめども としはかぎりと なりにけり わがおもふことの いつかはてなむ
あさなあさなめかれぬつばき、あまりつまりたるやうなれバ、
   てもさへに うゑし椿を けふこそは をりてぞおくる いたづらにすな
只、まつるとばかりはいかが。
正貞老                                          良寛



夏衣 たちてきぬれど みやまべは いまだ春かもとや うぐいすの鳴く
ひとりぬる たびねのゆめの あかときに かへれとやなく 山ほととぎす

     まくらべ虫ならば
                                         良寛
正貞老



       こぞははうさうに而て 子共さはにうせにたりけり 世の中の
       おやのこころにかはりてよめる
  あづさゆみ はるもはるとも おもほえず ずきにしこらが ことをおもへば
  はるされば きぎのこずゑに はなはさけども もみぢばの すぎにしこらは
  かへらざりけり
  ひとのこの あそぶをみれば にはたづみ ながるるなみだ とどめかねつも
  ものおもひ すべなきときは うちいでて ふるのにおふる なづなをぞつむ
  いつまでか なになげくらむ なげけども つきせぬものを こころまどひに
尚々、酒一尊恭拝受仕候。



     ひとのくににはありもやすらむ、しらず。このくにには
     いものかみとてねななとしにひとたびくにめぐりすとい
     ふあやしのものありて、をさなきものをなやましける。
     ことしはこととしにもにず、やめるもののいけるはなし。
     からうじていけるはおにのおもてとなる。かれ、こもて
     るものはひとのここちせず。ひごとにのにおくるひつぎ
     をかぞふればおゆびもそこなひつべし。このころ、その
     やまひにてをさなごをうしなひしひとのもとより、そこ
     そこのあつらへものとてみづからのももたせおこせ
     たりしひとなむ、そのをさなごのかみにてありける。
     やまひにてをとつひむなしくなりにたりといふをききて、
     おやのもとへよみてつかはしける
 けむりだに あまつみそらに きえはてて おもかげのみぞ かたみならまし
     またかくも
 なげくとも かへらぬものを うつしみは つねなきものと おもほせよきみ
     さてその法名はといへば 信誓といらへばかくなむ
 みほとけの まことちかひの ごとあらば かりのうきよを なにねがふらむ
     そのよは法華経を読誦して有縁無縁のわらはに廻向す
     とて誘引
 しるしらぬ いざなひたまへ みほとけの のりのはちすの はなのうてなに
いそぎ候間、おちし事も可有之。酒、たばこ、恭納受仕候。
正貞老                                       良寛




三輪権平宛八通

三輪権平老
寒さ弥益ニ候得共、御堅勝に御凌被遊候や。野僧無事ニ日を送候。先日は万葉
辱奉存候。今日御返済仕候。何卒次を御借度被下候。新潟へ参候のも、取集て
御借可被下候。いまだ不参候ハバ、其中又人を指上可申候。そのをりに御借り
可被下候。十一月末までには、大方御返済可仕候。早々。敬具。
    十月廿九日
    やれぎぬを ありのことごと きてはぬれども やまもとの をざざふくやは 
    さむくこそあれ



三輪権平老                                        良寛
寒気弥益に候得共、御堅勝ニ御凌被遊候や。野僧無事ニ日を送候。先比ハ万葉拝
借被下辱奉存候。此度五より十まで御返済仕候。何卒残を皆ながら御恩借度被下
候。十一月の月末には御返し可仕候。もし新潟へ参候万葉、いまだ不帰候ハバ、御
取よせたまはるべく候。又の便りに御借度被下候。ひとへに頼上奉候。



権平老                                       良寛
寒天の節、如何御くらし被遊候や。野僧無事に罷過候。今日人あげ候間、万
葉のこり一、二、三、十四の下、御借度被下奉希候。敬具。
                                            良寛
    十一月十三日
権平老



厳寒之節、如何御暮被遊候や。野僧無事ニ罷過候。然ば万葉略解三の上下、十四
の下、御落手度被下候。猶又一、二の巻、御拝借奉希候。是は地蔵堂中村、寺泊
外山両家之中に遺而も相とどき可申候。以上。
     十月二十四日
                                             良寛
三輪権平老



厳寒節、如何御暮被遊候や。野僧無事罷過候。然ば万葉略解三の上下、十四の下
の巻、御返済仕候。御落手可被下候。一、二の巻、新潟より御取よせ被遊て、御拝
借奉希候。御状をそへて、寺泊外山、地蔵堂中村、両家の中、出置被成候ハバ、
無滞、御とどき可申候。以上。
    十一月                                     良寛
三輪権平老



外の御返しはあとからさしあげたく候。
    わがために あさりしふなを いなだきて おとしもあへず をしにけるかも
                                                良寛
    十二月十日
三輪権平老                                          良寛



三輪権平老                                      良寛
     与板
     こたびまねく おほみみたからを みめぐみませり
     とききて
あらたまの としはふるとも さすたけの きみがこころを わがわすれめや
                                              良寛



酒をあたためてのむべし。
おこるべからず。
のみて、大食すべからず。
こゑをいだすべし。
  但ゑうてかかなぐる可からず
大坂屋どの                       良寛より

             ※大坂屋とは、三輪権平のことらしい。


三輪佐市(佐一)宛三通

光照寺の御隠居破了和尚病気にて、飛脚参り、出雲崎へ帰候。其跡へ御尋被下、
不及面談、残惜奉存候。聊以偈換書札。
  早訪師兄病 得得携瓶之
  海闊一雁遠 満山秋木時
                                                良寛
三輪佐一居士



曾冒風雪尋草廬
一椀苦茗接高賓
那時話頭尚在耳
倒指早是十餘春
旧痾邇来無僧悩
時当歳寒宜厚茵
我道回首実堪嗟
天上人間今幾人
佐一老                        良寛



別君知幾日  起居心不平
寂寂春已暮  炎炎暑正盛
一庭只青碧  千峰□蝉声
早晩接高談  慰我斫額情
三輪佐一居士                      良寛



三輪九郎右衛門宛二通

左一老遺物、並酒、味噌、恭受納仕候。野僧今月五日、中山に住庵仕候。
来春御面談申上可。爾爾。敬白。
    十月十六日
三輪九郎右衛門老                              良寛



     舌代
御申越され候趣。ゐさい承り申候へども、これより他行の都合にて、御めもじ、
今日ハ出来かね候。明日の暮方ならば、当方にてハ結構に存入候へ共、如何候や。
一応伺上候。以上。
     十月廿五日                                  良寛
与板                
三輪様




大村光枝宛一通

わがおもふ ちへのひとへも なぐさむる こともあるやと あまぐもの たなびくやまを
うちみつつ けふもくらしぬ いともすべなみ
光枝うし                                     良寛



おむろ宛(中村権右衛門好哉の妻)一通

   覚
一 銭四百文
 右之通たしかに請取申候。
    子ノ三月四日
おむろ殿                               良寛



証聴宛二通

先日は寛々御話致大悦。今日は酒、米、なつとう、あをさ、せりたまはり、恭納受
仕候。比日話致候丹田を修し御試可被遊候。以上。
    二月一日
証聴老                                      良寛



如仰厳寒信に困入候。此頃は少々打くつろぎ候。王義之法帖二冊、お返し申候。
後巻お遺し被下度候。
証聴老                                        良寛




観国宛一通

杜子美詩集寛熟覧仕候。永日以て参、百千万億分の一つ、御礼申上可候。以上。
    正月六日
清伝寺観国上人                                   良寛



大関文仲宛一宛

大関文仲老
此度御書もの御親切にしたため被下候ども、野僧元より数ならぬ身に候へ而、世の中の
是非得失の事うるさく存、物にかかはらぬ性質に候間、御ゆるしたまはり度候。
然ども何とて生涯一たび御目にかかり、心事申上度候ども、老衰の事なれば、しかと
は申上られず候。中原元譲老子、わざわざ草庵へ御出被遊、御たのみ被成、信にこま
り入候。失礼千万。以上。
  四月十一日                                       良寛




菓子屋三十郎宛二通

白雪糕、少々御恵みたまはりたく候。以上。
    十一月四日
菓子屋三十郎殿                          良寛



三十郎殿                                   良寛
先日書状あげ候ども、此度好便有之候間、又申上候。石地のないとうより三音考
御借被下候や。若し御宅まで参候ハバ、今日被遣被下度候。以上。
  十一月十日



大谷地五右衛門宛二通

先日は御出之処、餘早々残念ニ候。僧も只今全快致候間、御安心可被下候。今日
玉砂糖一曲、並六百文恭受納仕候。
                                              良寛
    六月廿一日
五右衛門老                                       良寛



久々御疎遠ニ罷過候。今日御相承、大慶奉存候。然ば墨、豆、並ニ青銅四
百文恭納受仕候。何事も来春寛々御話申し候はんと筆をとどめ候。以上。
   十一月十七日
大谷地五右衛門老                             良寛



およし宛(山田杜皐の妻といわれる)一通

  ぬのこ一、此度御返申候。
  さむくなりぬ いまハ螢も 光なし こ金の水を たれかたまはむ
                                             螢
     かなつき
およしさ                           ほたる
山田屋



三条宝塔院住職、隆全宛四通

先日手紙あげ候。とどき候や。野僧登山仕度候へども。御寺も此間ハさわがしから
んとひかひ候。先日の残酒も今に有之候。さて私も分別を取なほし候へば、飲食も
甚うまく、日々に平瘉致候間、少しも御あんじ被下まじく候。是のみ申上度候。
御ついでに宝珠院様にへも、其趣よろしく御通達たまはり度候。早々。以上。
    二月廿二日                                    良寛
隆全阿闍梨                                        良寛



先日は餘御疎末之到、残念に奉存候。今日は人被遣、御荷物之中のやきふは本覚
院より参候。酒一尊、茶器一箇、器物一対、恭落手仕候。頓首。
    六月六日
御隠居様                                    良寛
  侍者御中                                  拝首



此度三条の大変承、信に恐入候。御尊体如何被遊候や。宝塔院御住持如何被遊
候や。三浦屋如何成候や。もし命有候ハバ、宜しく御伝言御頼上申候。其他一一
筆紙ニ難尽候。此方大ニいたみ候へども、野僧が草庵ハ無事ニ御坐候。御心安くお
ぼしめし被下度候。早々。頓首。
   霜月廿一日
宝塔院御隠居様                                  良寛



隆全阿闍梨                                      良寛
昨日は御来臨の処、早々之至ニ候。餅、雪のり、恭受納仕候。気分も漸々よろ
しく候間、一両日中、何卒御苦労ながら、又御来駕奉候。
                                              良寛
     十二月二十二日



三浦屋(遠藤)幸助宛二通

先日つかはされ候ものは、庵のあたりの長四郎と申ものの家へあづけおき候。
やしやびしやは、前の大木のまたうゑ候。まことにつき候。以上。
   四月十五日
                                           良寛
三浦屋                                       良寛



    白雪に 道はかくれて 見えずとも 思ひのみこそ 知るべなりけれ
おびひとすぢ うやうやしくをさめまゐらせ候。かさねてまゐり候をりと申のこし候。
かしこ。
三浦屋御ぬし                                  良寛



能登屋元右衛門(木村利蔵)宛四通

近日中に参上仕可候。書物一冊、からかさ、御うけとり被下べく候。あハせ一ツ、
かへし候。洗ふともほすとも、帰らぬ中になし可被下候。以上。
    三月八日
能登や元右衛門老                                  良寛



春寒如何被遊候や。野僧無事ニ罷過候。然あはせ一日もはやく被遺たまはるべく
候。外へまゐり度候間。
                                           良寛
  三月二十日
能登屋元右衛門老                               良寛



寒になり候。如何御くらし被遊候や。私無事に罷過候。然バわたいれ一まい、便
に被遣被下度候。早々。以上。
   九月十六日
能登屋元右衛門老                                良寛
                                            従与板



寒さになり候。如何御暮し遊し候や。野僧無事ニ罷候。然バぬのこ一つ、もめん
衣、便につかはしたまハり度候。以上。
    九月十七日
能登屋元右衛門老                               良寛



木村周蔵(木村利蔵の子)宛一通

周蔵殿                                        良寛
此度、貴様かんだうの事ニ付、あたりのどもいろいろわびいたし候へども、なかなか
承知無之候。私も参りかかり候故、ともどもにわびいたし候へバ、かんだうゆるすこ
とに相なり候。早速御帰候而可然候。さて御帰被遊候て後ハ、ふつがふの事な
きやうに御たしなみ可被成候。第一あさおき、親の心にそむかぬ事、し事も手の及だけ
つとめて可被遊候。其外の事も御心づけ可被遊候。かさねていかやうな事でき候
とも、わびごとハかなはず候間、さやうにおぼしめし可被成候。以上。
    四月十四日
                                            良寛  



山本馬之助宛(橘左門)十通

やけどの薬の製法を御しるし被下可候。以上。御しるし遊被候書付は、与板の山田
屋へつかはさる可。
     三月十三日
橘馬之助老                                        良寛



万葉十の巻より二十の巻まで、御拝借たまはり度候。一ノ巻より十の巻までは、何卒御
借おき可被下候。是ハ人の為。
  こよろぎの いそのたよりに わがひさにほりし たまだれの をすのこがめを
  ひえてしかも
  霜月三日
                                          良寛
橘左門老                                    良寛



すぎしころ御話被遊候不動尊の事、委細国上寺御方丈ニ語り候へば、其御あいさつ
に何分当人の御願にまかすべし、此方においてとかくの子細なし、其趣を出雲崎へ申達
セらるべしとの事に候。くはしくハ、来春面談の時を御待可被下候。万一愚僧明日に
も命終り候ハバ、其時御自身国上寺へ参詣被遊、方丈ニ此書状の趣を御話し被遊、
其後不動尊を頂戴被遊、御取持いたされて可然候。此ハ念の為に申遺候。
   いつぞや、はだぎの事申おき候。でき次第ニ寺泊まで、御だし可被成候。
    十月廿五日
橘馬之助                                           良寛
   用事



ちまきたまはりめづらしく候。私も今ハ快気致候。御安心可被下候。かけものよろ
しく出来候。ちきりやに申可被下候。与板よりまゐり候椅子、便につかはし可被下候。
   五月四日
馬之助老                                         良寛



此度地蔵堂へ参候につき、富取へ参むすめの事承候。主人の被申候ハ、むすめ
もことし十一ニ成候。まだ幼年の事に候まま、手離す了簡御坐無候。それ故何方
より申まゐり候ひても、皆辞退仕候。十七八にも成候ハバ、所存も可有之候。その
おもむき、能々通達してくれよとの事に候。早々。以上。
     三月二十九日
橘左門老                                        良寛



先日は、ゆりねたまはり、うやうやしく納受仕候。浄玄寺の手紙もとどき候。
     朧月廿八日
橘左門老                                       良寛



神歌たまはり、拝誦仕候。□きりも其後御うつり被下度候。後婦之事も調候。
由、歓喜仕候。先日正貞老より手紙参候も其しらせに候。しろざたう、あをな
むばむ、恭納受至候。以上。
    みな月廿九日
                                       良寛



先日のまくり並ニ掛物唐紙、返済申候。被遺候薬、十帖あまり服用仕候へども、
何のしるしも無之候間、餘りハ御返し申候。重て御出被遊候時節、御進物の菓子
等ハ、必々御無用ニ候と、主人より私ニ申てくれよとの事に候。早々。以上。
                                             良寛
     七月十日



先日のこしおき被成候唐紙、まくり、並ニ掛物、このたび御返申候。御薬ハ服用
仕候へども、しるしなく候まま、もし用様も御坐候はんと思候へば、餘ハつかは
し候。さてしけり病ハ、人の教候故、キウリの根をセんじて服し候へバ、平兪致
候。
    七月十一日
橘左門老                                      良寛



橘左門老                              良寛
一両日は食事すすみ候。口中うるほひを生じ候。
    霜 廿七日
                                    良寛



七彦(山田権左衛門修冨)宛五通

七彦老                                            良寛
なぬかいち
年内はゆりつと、うやうやしくをさめまゐらせ候。
  よのなかは かはりゆけども さすたけの きみがこころは かはらざりけり
   正月十一日



先日はゆりねたまはり、恭しく拝受仕候。
   さすたけの きみがたまひし さゆりねを うゑてさへみし いやめづらしみ
     三月十七日
七彦老                                       良寛



先日はゆりつとたまはり、恭しく納受仕候。
    朧月廿八日
七彦老                                           良寛



過ぎし頃は、菓子しろ、恭受納仕候。この頃は百合根を。
  新玉の 年を経れども さす竹の きみが心は 忘られなくに
七日市御老人                                     良寛



歳寒之時節、御清和に御凌被遊候や。白幽子伝、弥御つとめ被遊候哉。野衲は彼
の法を修し候故か、当冬は寒気も凌ぎやすく覚候。有詩云。
   粉粉莫逐物 黙黙宜守口
   飯喫腸飢始 歯叩夢覚後
   令気常盈内 外邪何謾受
   我読白幽伝 聊得養生趣
七彦老                                         良寛




外山(むら)宛五通

さかや
外山                                           良寛
  口上
きりものはセんだくあそばされ候ても、あとで御うちくださるまじく候。うつたきもの
はよはりもし、ひやついてあしく候。
   四月三日



さむさにまかりなり候ども、御かはりなう御くらしあそび、めでたく存まゐらせ候。
冬衣でき候由、先日おほせられ候。此ものにつかハされたまハるべく候。かしこ。
   九月十九日
外山氏                                        良寛



とやま
このあひ、さむさいやましに候へども、ことなううちくらしまゐらセ候。けさはわたこ、
やまのいも、のり、かんぴやうたまはり相とどき候。先ごろはたびとどき候。早々。か
しこ
        霜月十日                                良寛



とやま氏
   此あハセ、春までにセんだくなし可被下候。
先日ハまくらかけ、ならびにしたぎおくりくだされ、あひとどき申候。まくらかけハ
とどめおき候。此冬ハきものたくさんに候まま、したぎは御かへし申可候。かしく。
    十一月廿日                                  良寛



此者に米屋の六角の灯ちんつかはし被下度候。以上。
外山                                          良寛




齋藤伊右衛門宛八通

白麦、りんご、酒一樽、恭受納仕候。涼なり候ハバ、一夜がけに参上度仕
候。以上。
   六月晦日
齋藤伊右衛門老                              良寛



先日草庵へ御来臨被遊、酒一樽、恭納受仕候。万葉書了候間、つるがやへ御
返し可被下候。米も残少なり候間、たまはる可候。涼なり候ハバ、一夜がけに参
上度仕候。以上。
    九月十日                                 良寛
齋藤伊右衛門



釈是人期日の御供養物、恭受納至候。当日、法華経を読誦して回向するとて、方
便品の十方仏土中、唯有一乗法無二亦無三といふ処にいたりて、
    うたがふな六出の花も法の色
      十二月朔日
斎藤源右衛門老                                 良寛



齋藤伊右ヱ門老                                     良寛
先日はゆりね並に金ぺいたう、恭しく受納仕候。去年は油たまはり(後半なし)



暑気甚罷成候。弥御平安ニ御坐被遊候や。野僧無事ニ住庵仕候。然ば油
一とくりたまはる可候。以上。
     六月九日
齋藤氏                                     良寛



甚暑の節、御清和に御凌被遊奉賀候。野僧無事に安居仕候。然ば音紙面の趣、
承知仕候。殊に供養料遺候。三宝も受納可有之候。
    七月十三日
斎藤氏                                      良寛



齋藤氏                                 良寛
今日は人つかはされ、たより承うれしく。さうめん、らふそく、かけもの、米、酒、
つけあげ、いご、しなじな恭納受仕候。以上。
     七月十四日
                                      良寛



此間暑気甚候。如何御暮し遊候や。僧も老衰し、万事にものうく候。こ
のあひだ由之老より、長サ五寸位のセと掛花いけ、使にもたせ遣候。その形
   
今のところ野僧にハ不用。貴宅ニ御用被遊可被下候。近中に持参仕候。
   秋はぎの 花のさかりも すぎにけり ちぎりしことも まだとげなくに
    八月十一日                                    良寛
斎藤老 




かか宛(定珍の妻か母といわれる)一通

このごろ御かり申候のこりのしよもつを、此ものに御かせたまはる可候。 かしこ。
    十月十六日
かか殿                                       良寛



貞心尼宛二通

先日は眼病のりやうぢがてらに、与板へ参候。そのうへ足たゆく、腸いたみ、御草庵
もとむらはずなり候。寺泊の方へ行かんとおもひ、地蔵堂中村氏に宿り、いまにふ
セり、まだ寺泊へもゆかず候。ちぎりにたがひ候事、大目に御らうじたまはるべく候。
  秋はぎの 華のさかりも すぎにけり ちぎりしことも まだとげなくに
御状ハ、地蔵堂中村ニ而、被見致候。
                                             良寛
   八月十八日



   かへし
ひさかたの 月のひかりの きよければ てらしぬきけり からもやまとも むかしもいまも
うそもまことも やみもひかりも
はれやらぬ みねのうすぐも たちさりて のちのひかりと おもはずやきみ
     ゆふのはじめのころ
きみやわする みちやかくるる このごろハ まてどくらせど おとづれのなき
                                               良寛
  霜月四日



浄玄寺(曾根智現和尚)宛二通

阿弥陀経一巻、御拝借被下度。
     十月十日
浄玄寺                                良寛



先日は、もんぱのたびたまはり、うやうやしく納受仕候。
     朧月廿八日
浄玄寺様                               良寛



ちきりや宛二通

てまりひとつおむおくりくだされ、うれしくぞむじまゐらせ候。
    さすたけの きみがおくりし にひまりを つきてかぞへて このひくらしつ
     二月廿一日
ちきりや                                           良寛



       
此品、出来候やうニうけ給り候。此人ニ給りべく候。
     七月六日
                                          良寛
ちきり屋

                               ※毬が画かれている。


新木与五右衛門宛一通

此程めづらしきゆりねたまはり、うやうやしくをさめ候。私も此ほどは寺泊へ参可存
候。めぐりめぐりて其御地へも参度候。かしこ。
   二月九日                                    良寛
新木与五右衛門老



むらまつ屋宛一通

去冬御帰宅の後、ほぐの中に唐紙残しおかれ候。只今返し申候らはんとおもひ、いろ
いろ尋候得共、不見候。信に老もう致候。此後有之候ハバ、返済度仕候。
   おとみやの もりのしたやに われをれば ひときたるらし ぬてのおとすも
   乙宮の 森の下屋に 吾居バ 人来らし 鐸の音すも
むらまつ屋                                       良寛



庸右衛門宛二通

げた一足、是ハ山田へ被遺可被下候。あかいはなをのげたもつけて。山田とは、蓮正
寺の前の山田のことなり。
    三月廿二日
庸右衛門老                                      良寛



今日は人をつかはされ、御申越され候古事記こと、又風をひきかへし、二三日とぢこも
りをり、一両中に書了参上仕候。しなじな恭納受仕候。以上。
     十月廿九日
                                             良寛
庸右衛門老




小玉理兵衛宛一通

平安之御相承、安心仕候。三音考石地より参候ハバ、使しだいに御とどけ
可被下候。御老父死去の由、驚入候。如仰廻向可仕候。御明、やまのいも、
けとう、恭納受仕候。早々。
   十一月十九日
小玉理兵衛老                                良寛



小林正左衛門宛一通

小林正左衛門老                              良寛
  尚々見合て参上仕度候。
御紙面恭被見仕候。野僧無事ニ罷在候。御あんしん被下度候。然ば手
まり、菓子、にまめ、恭納受仕候。以上。
    正月十二日



米屋宛(石原半助)一通

わたくしもこのごろはそくさいにあり、ことしもくらし候。このたびはたび、わたぼう
したまはり、たしかにうけとり候。はるになりさうらはば、ゆるゆるおめにかけ申しあ
げたく候。
    しはす廿七日                                 良寛
米屋おもとへ



佐藤仁左衛門宛一通

新春御慶、何方も目出度申納候。先日は餅、沙唐たまはり、恭納受仕候。
猶期永日之時候。敬白。
    正月十八日
佐藤仁左衛門老                               良寛



斎藤武左衛門一通

先日は高田あはあめたまはり、大勢あつまり賞味悦入候。早々、以上。
斎藤武左衛門                                      良寛




守静(富取長左衞門北川)宛一通

いんきん、たむし再発致候間、万能功一御恵投度被下候。以上。
    七月九日
守静老                                      良寛

                                   ※貝が描かれている。


宇又宛一通

信寒甚罷成候。野僧無事に罷過候。貴家如何御暮し被遊候や。今日ハ餅、
なすびづけ、並に三蔵園贈被下恭納受仕候。万事春陽之節、以参御礼申上
候。以上。
   十二月十二日                               良寛
宇又老


七星宛一通

   おほぞらの かぜのごとある きみなれバ くるとはすれど めにはみずけり
七星ぬし                                           良寛



兵蔵宛一通

秋風のさわぐ夕となりにけり
    七月廿二日
兵蔵老                                     良寛




(内藤)方廬宛一通

此度村之若もの、宮額を上申候。御法楽ニ御染筆可被下候。神名ハ乙子大明神、方
寸ハ此ものどもへ御聞可被下候。以上。
    三月五日
雲浦
方廬(老?)                                        良寛
  用事




祥二宛一通

今日は御相承、大慶ニ奉存候。野僧無事に寒気を凌候。御薬一種恭納受
仕候。小紙うけ取候間、したためしだいに指上可申候。孫過庭の書、長々拝
借有難奉存候。早々。以上。
    十一月一日
祥二老                                      良寛




雄平(中村権右衛門好雄)宛一通

先日本間より遺候状ハ、信ニ私に候。御あづけおき申候銭、たまはり度候。
い゛しょう。
     八月廿九日
雄平老                                     良寛



正誠宛(富取武左衛門)一通

あきのよも ややはださむく なりにけり ひとりやきみが あかしかぬらむ
正誠ぬし                                          良寛




本間(不明)宛一通

八十之御賀のよしにて、御酒一樽被舌、只今一酌之処にて大に妙に候。巻は直に相揮
申候。右御請迄如此に候。早々。不尽。
本間兄                                            良寛




了阿宛一通

今日は、わざと人被遺、委細承候処、御地へ住庵致やうにとのおぼしめし候。
野僧近比老衰致、何方へも参心無之候。何卒其義ハ可然人に御たのみ被遊被下
候。以上。
    七月四日
                                          良寛
了阿君



五左衛門老宛一通

今日は御相承、喜悦仕候。私も去冬寒気まけにて不快に候処、此度は少々宜
しく候。御病体如何候也。餅、太白、いも、青銅三百文、きんざんじみそ、恭
受納仕候。暖気催候ハバ、御目にかけ申度候。以上。
     正月廿日                                良寛
五左衛門老                                   良寛



定清宛一通

定清老                                         良寛
あいた樽一つ有之候。何方へかあつらへとおぼえ候。おつて又聞合可被下候。
   さくらばな はなのさかりは すぐれども つぎてきかなむ やまほとどぎす
                                              良寛




森山宛一通

書物被見仕候。徂来先生のやうに見え候。以上。
     みなづき廿四日
                                               良寛
森山老                                           良寛



八十吉宛一通

先日申上候とうゆ、涌井におくやうにおふせられ候ども、心におぼつかなくおも
ひ候事御坐候間、持参仕候。ゐさいは御面談の時申可上候。以上。
    八月十六日
八十吉老                                      良寛



宛先不明二十五通

あはせのセんだく出来候ハバ、此人にもたセつかはさる可候。以上。
    八月 日                                      良寛



寒天の節、如何御暮被遊候や。野僧無事に居過候。然ばもめん衣なくいたし、不自
由に候。もめん二たん、墨染になし被遺可被下候。ひとへに頼入候。以上。
   十月五日                                      良寛



こしのうみ のづみのうらの 雪のりは かけてしぬばぬ 月も日もなし
こしのうみ のづみのうらの のりを得ば わけてたまはれ いまならずとも
こしのうらの おきつなみまを なづみつつ つみにしのりは いつもわすれず
   十一月四日                               良寛



敬子之帖恭御返済申上候。書状一一御とどけ可被下候。
    こどもらは いまはやたけの ひびつらむ ゆきてみましを ことしのはるは
     正月廿日                                        良寛



此春はあわもり一箇たまはり、恭納受仕候。風味いまにわすれ難候。以上。
     閏三月廿五日
                                             良寛



如来意陽春之御慶、何方も目出度申納候。福寿草方寸金、金龍丸各一包、烟草、
恭納受仕候。此春ハ三浦やより、くわりん漬一曲み歌たまはり、落手仕候。
何卒御ついでに御伝言被下度候。野僧も見合て、其御地へ遊行仕度候。以上。
   四月九日
                                           良寛



米、衣、落手仕候。うこぎ信ニ持参致候。長崎におき候。老年故忘却仕
候。八日之御時斎ハ、しかと御返辞不仕候。御待被下まじく候。以上。
   五月六日



先日は御出之処早々。野僧一両日やうやく快気仕候。今日は三黄丸恭拝受
仕候。以上。
   五月廿三日
                                           良寛



松樹千年の御歌によりて、あとにて思出候。
  ことしより 君がよはひを よみてみむ 松のちとせを ありかずにして
先日は御薬代御帰し被遊佐売ろう。たしかに落手仕候。以上。
   六月十一日
                                             良寛



おもひわび うちでてみれば ひさかたの あめにかたぶく やまとなでしこ
     六月十二日
                                              良寛



一 此一冊柳川より来候間、御とどけ申上候。先比御貴宅ニ遺置候。
一 寒山詩はコセキ六郎子方、御とどけたまはりしや。
一 詩人玉屑、酒屋より参候ハバ、涌井氏へ御返斉度被下候。以上。
一 此状ハ柳川へ御当地より便に被遺可被下候。
    八月七日
                                            良寛



秋冷御清和ニ御凌被遊候や。野僧無事ニ罷在候。去ぬるころ、御はなし被遊候キ
ンの事、五合庵へ御寄付のおぼしめしに御座候はば、今日此者ニ御わたし可被下
候。好便ニ候故、文ハつかはし候へども、其地ニ而御入用の事出来致候ハバ、御
返じ御詩たため可被下候。何分御隠居と御相談の上、宜くおぼしめしにかなふやう
になし下被下候。
   九月
 萩すすきわが行道のしめべせよ
                                             良寛



此秋は円座無滞相とどき申候。油は今日外の人にあつらへ申候間、さやうにおぼ
しめし可被下候。以上。
    十月十四日
                                           良寛



雪の中に人を被遺候ども、近ごろは物書事すべて不出来候。筆ものころずきれはてて
候。たとひ有ても、手にとらず候。何処から参り候とも、みなみな如此候。以上。
    霜月四日
                                              良寛



逐日寒冷相進候処、愈々御壮健之旨、法祉不斜候。寔に先日は邂逅御賁臨之処、
何の風情も無御座遺憾此事に候。然ば先達、御令室様御卒去の由、御愁傷奉察
候。乍略以使者、御香資贈進候。右御弔儀旁如斯御座候。
   十一月十一日                                  良寛



右の掛物真偽は不知、あまりおもしろくはおもはれず候。尚又別人に御見せ被遊而
可然候。以上。
   霜月二十八日
新潟                                           良寛



このごろは甚不快に候間、わざわざ人被遺候ども不書候。以上。
   十一月                                   良寛
 かしは崎



一両日は寒気殊に甚御坐候処、如何御暮被遊候や。野僧無事ニ罷過候。然
ばいつぞや御借用申候朗詠、此度御返し申上候。去春御宅ニ而拝覧仕候尊院
親王の梁園帖、一寸御借度下候。来春ハぢきに私持参仕御返済可申上候。
以上。
  梁園帖とハ覚えども、もし名のちがひも可有之候。
   十二月廿日
                                         良寛



一筆申上候。然ば乙助しばられ候ハバ、はやく御しらせ可被下候。
     八日



此頃は、ぜんまい玉恭しく受納仕候。持経院主へよろしく茶の礼を。



ひまのときに、おさまの得手なものを画ておくれ。花のうへに讃のできるやうにあけて。



ひまのときに、花のうへに讃のできるやうに、おさまの得手なものを画ておくれ。



ハイ今日は。雑炊の味噌一かさ下され度候。イハサヤウナラ。



ハイ、コンニチワ。何卒雑炊の味噌一かさ被下度候。ハイ、サヨナラ。
                                               良寛


此人、一夜御とめ可被下候
                                      良寛




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