遍澄さんと�髑S和尚

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小山宗太郎

　�髑S和尚は、三条の真言宗の宝塔院の住職であり、良寛様とはとても親しい関係にあった。良寛様が三条に来た際には、二三ヶ月もそのお寺に滞在したこともある。隆全和尚は国上寺で若い頃修行したことがあり、その当時、五合庵に住んでいた良寛様と親しくなったようである。「良寛禅師奇話」を書いた解良栄重も幼少の頃、宝塔院で学んでいる。
　さて、私が宝塔院に訪れた際、�髑S和尚のお墓にお参りをしたことがある。�髑S和尚は、天保6年(1835)12月13日に死亡している。良寛様は天保2年(1831年)1月6日に亡くなっているから、その約5年後である。お墓を見て驚いたことに、その土台の前面に「願王閣」の文字が彫られていた。それに地蔵菩薩が墓石である。地蔵菩薩は願王閣の守り本尊ではないか。
　願王閣とは旧分水町にある堂宇であり、良寛様の弟子の遍澄さんが願王閣主になった年が、文政9年(1826年)。その後嘉永3年(1850年)まで務め、付近の子弟の教育を行ったり、良寛様の詩歌の収集を行ったりしている。願王閣の創建は、文治3年（1187）に西行法師がこの地を訪れ源頼朝から拝領とされたとされる黄金地蔵を胎内仏とする地蔵尊像を自ら彫り込み堂宇を建立し安置させたのが始まりと伝わっている。その後衰退したが、現在の願王閣は天保8年（1837）に再建されている。再建にあたっては大庄屋である富取倉太正敬と富取良助正敏が大きく関わったとされ、遍澄さんはこの２人に頼まれて、願王閣主になったのであり、その再建にも大きく関わっている。
　�髑S和尚と遍澄さんの関係について考えよう。良寛様は三条にしばしば托鉢に出かけており、�髑S和尚のお寺に立ち寄り、長く滞在している。その時は既に遍澄さんは良寛様の法弟であり、�髑S和尚と遍澄さんは良寛様を通して面識があったことは間違いないことであり、単なる知り合いを越えて、とても親しい間柄であったのであろう。良寛様と一緒に宝塔院に滞在していたことも十分考えられる。
　�髑S和尚の地蔵菩薩の墓石は、願王閣から贈られたものではなかろうか。そうでなければ「願王閣」と前面に文字が刻まれないであろう。「�髑S墓」の文字は向かって右側の側面の土台に彫り込まれている。当時、願王閣は大庄屋富取家の庇護を受けており、財政的にも豊かであった。当然遍澄さんの影響力も強いということである。遍澄さんが良寛様の友人である�髑S和尚の葬式の際に何もしないことは、まず考えられない。遍澄さんは�髑S和尚へ尊敬の念を抱いていたのではなかろうか。その証明が墓石なのである。合掌。

2011.9.10作成