一人歌仙一巻

はじめに H20.6.21作成

地獄絵図の巻

表6句
発句 満月は犀の河原を照らしけり   
石積みするは餓鬼ばかりなり  
第三 柳下に白き姿のお婆ゐて     
第四 やって来たれるあまたの亡者  
第五 次々とお婆に着物はぎ取られ   
第六(折端) 裸のままで河に落とさる 
初裏12句
第一(折立) 向う岸に着きし処は地獄なり    
第二 地獄の花は曼珠沙華なる      
第三 亡者らは針の山にぞ鬼共に      
第四 追はれて足は血だらけとなる     
第五 くれなゐの椿の花は咲きにけり    
第六 次の地獄は舌を抜くとや       
第七 両腕を鬼に押さえられ泣き叫び
第八 舌引つ張られ切り取られたり  
第九 どろどろと口より赤きが滴りぬ     
第十 次の処は轢きつぶし地獄      
第十一 あかあかと火焔車は桜花     
第十二(折端) 舞ひ散らせつつ現れ出でし     
二の表12句
第一(折立) 次次と亡者を轢いて春爛漫
第二 亡者の悲鳴響き渡れり        
第三 ひんがしを眺めてみれぱ血の地獄   
第四 ぐつぐつ煮立つて血の泡出でつ  
第五 満月は冬日の如く輝けり     
第六 血の池地獄で亡者の恋ぞ     
第七 一本のするする蜘蛛の糸伸びて
第八 男が一人糸に掴まり       
第九 上れども多くの亡者後追ひぬ
第十 お前ら落ちろと男叫びぬ     
第十一 蜘蛛の糸ぷつんと切れて亡者らは   
 第十二(折端) 団栗の如落ちゆけり       
二の裏6句
第一(折立) 針の山紅葉となりて針の実の
第二 零れてそれが針となりたり      
第三 それぞれに地獄の四季は現れて    
第四 今は春でも次には冬と        
第五 ぬばたまの地獄の夜は春の宵   
挙句 何処かよりぞ琴の音響く